レティシア妃 その8 ダビードさんの特務 | スペイン王室

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スペイン王室の現役メンバーから、遡ってその先祖の方々まで、おもしろそうな逸話をピックアップしてお届けします!

2003年9月初旬、いつものように、ダビード氏のもとに
レティシア妃から電話があったそうです。


“ダビード、家に来てちょうだい。大事な話があるの。電話じゃ
話せないのよ。”


その声音から、いつもの儀礼的な話ではないとすぐに
分かった。あの頃、大体レティシアの話といったら、“国家に
関わる問題ばかりだった。僕は、すぐに車を運転して、
皇太子公邸に向かった。婚約発表は2ヵ月後の11月1日
に予定されていた。(つまり、婚約発表の2ヶ月前以上から
既に公邸で同棲されていた、と言うことですね。まあ、この
辺は、一般市民同様と言うことで、スペイン国民は受け入れ
そうですね。日本では到底無理でしょうけれど。)

ダビードさん曰く、宮殿の敷地は広く、Guardia Civil(市街地
以外、村や幹線道路などを警備する警察)が警備する入り口
から皇太子の公邸まで、車で15分かかり、その間、日に
よっては、鹿の群れや猪に遭遇することがあるそうです。


El Pabellón del Príncipe está a menos de un kilómetro de Zarzuela

↑皇太子公邸


さて、皇太子公邸に到着すると、フェリペ皇太子とレティシア
妃が、広い居間でダビードさんをお出迎えなさったそうです。
フェリペ皇太子はいつも同様気さくに明るくお振る舞いですが、
幾日も睡眠不足なのか、疲れて老いたようなご様子で、
レティシア妃はと言うと、調子の悪い日のニュースのように、
手を暇なく動かされていたそうです。


“ダビード、大事な話があるの。フェリーぺと私にとって、
致命的になりかねないくらい、大事な話なの。これが、他の人に
知れ渡ったら、結婚話は駄目になってしまう・・・ それで、
あなたの助けが必要なのよ。つまり、私、一年前にある
クリニックで手術を受けたの。”


“うん、それで?”


“その手術が行われた事実を誰にも知られたくないの。”


“誰が、君が一年前にやったことに興味を持つって言うん
だい?意味が分からないよ。その手術がどんなに重要だって
言うんだよ?”


“一年前、マドリードのクリニカ・ダトールで堕胎手術を
受けたの。”


“まあ、でも、今時21世において、離婚だってどうってこと
なかったんだし、堕胎することだって、そう珍しくないし・・・”


“そうじゃないの、ダビード、分からないの。このことを
ソフィア王妃がお知りになったら、結婚を絶対反対されるわ。”


“分かった、分かった。でも、僕に何をして欲しいんだ?”


“クリニックに行って、堕胎に関する全ての書類を消して
来て欲しいの。”


“誰もそのデーターに二度とアクセス出来なくすることが
重要だ。時間がない、急いでくれ。”

そこで、初めてフェリペ皇太子が口を挟まれた。


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ダビード氏曰く、もうそれはお願いや好意の部類には
入らず、一種の命令のうようだったそうです。
とは言え、ダビード氏はこの命令を心地よく受け入れた
そうです。その理由は、まず従妹がテレビのニュース
キャスターとして有名になってきていたのが嬉しかった
から。もうひとつは、フェリペ皇太子が敢えて自分の
側近や友人ではなく、ただの弁護士である自分に頼って
きたから。逆に言うと、


“皇太子は随分ご立派な人柄の人物に見えるが、心から
信用し、頼れる友人や側近が周りにいらないのか?”


と気の毒に思ったからだそうです。


David Rocasolano en una imagen de archivo (Gtres)


ダビードさん


ダビードさんは、堕胎手術の日付から、子供の父親は、
ダビード・テヘーラ氏だと推測したそうです。ただ、
レティシア妃は、この妊娠についてダビード氏には、内緒
にしていたそうです。

スペインでは、長期間付き合っている相手がいる場合、
大体女性側がピルを飲んで、妊娠を予防します。妊娠
してしまった、と言うのは、ピルの飲み忘れですかね。
それで、相手に言えず、違法の堕胎手術を一人で受けた
とか?飽くまでも予測ですが。


さて、ダビードさんですが、フェリペ皇太子とレティシア妃
の命令に答えるべく、色々頭をひねられます。とは言え、
ダビードさんは、どこぞの情報局のスパイでも探偵でも
ありません。ただの法律の知識のある一般人です。
幸運なことに、友人の友人の元彼女がクリニカ・ダトール
に以前勤めていたことが分かりました。彼女に、


"自分は弁護士で、(違法な)堕胎を含む離婚について
今扱っていて、顧客がクリニカ・ダトールでその堕胎手術
を受けたため、その際の情報を全て消去するよう要求
してきている。”


と言う話をし、そこからクリニックに話を持って行き、最終
的には、10月22日に、レティシア妃の堕胎に関する全て
の書類及びデーターの消去を完了しました。その間1ヶ月
半強。ダビード氏のもとには、毎日のようにレティシア妃
から催促の電話が入ったと言います。ヒステリックで命令
調な話し方で“仕事”の進みぶりを聞いてくるレティシア妃
に、“恋する乙女心故”と理解を示していたダビード氏です
が、時には我慢の域を超えることもあったそうです。


そのように、ダビードさんが、レティシア妃のためにスパイ
紛いのことに専念していた間、の2003年9月、レティシア妃
は大きな昇進を遂げられました。TVE(スペイン国営放送)
でニュース担当局の局長アルフレード・ウルダーシ氏と一緒
に夜のニュースを担当することになりました。ダビード氏は、
レティシア妃がフェリペ皇太子と知り合いになられてから、
昇進が早くなったようにも、思えるが、元々素質があったからと、
述べています。レティシア妃は、この局長とは気が合わな
かったようですが、アルフレード氏の方はレティシア妃を
気に入っていたようで、しばしば飲みに出掛けるのに誘った
りしていたそうです。


Urdaci y Letizia, en Oviedo durante la celebración de los Príncipe de Asturias. (Foto: TVE)

↑アルフレード・ウルダーシ氏とレティシア妃


追記:

このレティシア妃の堕胎案件、元々ダビード氏がフェリペ
皇太子とレティシア妃のご成婚前に、情報隠蔽したもの
です。このダビード氏の働きがなければ、逆にこの情報は、
暴露本の出版の前、早ければご結婚前に、別の人物に
よって明かされていたかもしれません。元々自分が消去
隠蔽した情報をどうして、暴露本で明かしたのか。これは、
本を読んだり、ダビードさんのインタビューを見た、私なり
の感想なのですが、やはり、ダビードさんの心の中には、


“レティシア妃に裏切られた。”


と言う気持ちが大きいのだと思います。


“レティシア妃が皇太子妃になれるよう、こんなに協力して
やったのに、自分達がうまく“準王族”のように振舞えない
と分かると、必要ない人間扱いした。”


と。妹のエリカさんが亡くなった時、はっきりそうおっしゃった
そうです。


“だから、ロカソラーノなんていらないのよ!!”


それを聞いた時、ダビードさんは、もうレティシア妃は、
自分達の家族ではなくなってしまったと実感したと言います。
詳しい話はまた後日。