Victoire(ヴィクトワー)主宰・AROMAMUSICA(アロマムジカ)代表の杉浦菜美です。
様々なアプローチで『香りから広がる世界』の魅力をお届けしています。

先日開催した講座のご報告です。

 

 

≪1日講座≫香りから広がる世界

~調香で引き出す杉アロマの魅力~

天竜区水窪町の杉の幹から採れる精油を使い、「静かな夜」をテーマにブレンドオイルを作成します。杉の香りが持つイメージや効果を、調香師・アロマセラピスト・材木屋が、それぞれの視点で語ります。
ゲスト:天竜T.S.ドライシステム協同組合
 


【講師】杉浦菜美(日本産精油yuicaスペシャリスト・調香師・アロマセラピスト)
・開催日時:1/26(日) 13:00~15:00
・会場:SBS学苑遠鉄校(遠鉄百貨店新館8F)
・受講料:2,200円
・教材費:2,200円 (杉の芳香蒸留水100ml・精油1mlを含む)
・管理運営費:110円
・持ち物:筆記用具
 


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120分の講座。以下のような構成でお届けしました。

 

第1部:「アロマセラピー」と「調香」の話
~香りでどんなことができるのか?~
第2部:香りを調合してみよう
~試香・香り選び・ブレンディング~
第3部:杉の香りのルーツを知ろう
~水窪の榊原さんを囲んで座談会~

第1部では、「アロマセラピスト」と「調香師」、それぞれの活動内容をご紹介。香りの捉え方の違いや、香りでできることの多面性を感じていただきました。

体験談を通してリアルにお伝えするため、昨年秋~冬に実際にお受けした仕事や、自ら企画・実施した香りに関する催しをスライドでご紹介。

①高校アロマ講義  【アロマセラピー】(関連ブログはこちら

②香りの作品展  【調香】(関連ブログはこちら

③香りと音楽のコラボレーション  【調香×アロマセラピー】(関連ブログはこちら

分かりやすくするために、セラピーとアート、ざっくりと分類はしてみたものの、アロマセラピーの場面でも調香技術や感性が関わってくるし、アートの場面でも、植物の香りが持つ、人の心と体への影響が関わってくるし…実際には、はっきりとした境目はないですね。少なくとも、私自身はその”境界線”をまたいでいるような、そんなスタイルで活動している旨も、加えてお伝えさせていただきました。


さらに、アロマと言うと、精油や芳香蒸留水といった、「容器に入った形」だけが扱う対象のように思われる場合がありますが、決してそれだけが、アロマセラピーではないということ。(ゆず湯なんかも、立派なアロマセラピーですしね。)根本には、その場で息づいている植物の存在があるということ。自然が感じられる空間や、植物そのものも、香りの創作や表現における素材として、大事にしていることも、お伝えさせていただきました。

 

例えば…

このような端材や、カンナ屑なども、香りの素材として捉えています。

(杉浦作…これも受講者の皆さまに一つづつ、お渡ししました。)

 

ちなみに、こちらも「香り」の作品。

 

②で展示させていただいたルームフレグランスです。

この日のテーマ「杉」の香りも配合された8種類のブレンド。

(杉浦作…皆さんで香りを体感しました。)

 

さて、次はブレンディング。杉の”幹”から採れる精油は量も少なく(採油率が低く)、全国的に見ても抽出しているところはあまりないのではないかなと思います。杉を専門に扱う製材所だからこそ得られる、貴重な精油をベースに、作成。

 

準備段階として、ブレンドのヒントになればと思い、杉の香りの特徴を「アロマセラピー」「調香」の両視点で捉えるため、アロマの現場(アロマセラピーと調香の両方)でよく使用される、同じ”木部”から抽出される2種類の香り、「サンダルウッド」と「シダーウッド」をご紹介し、比較してみました。

化学成分やそこから導き出すことができる作用もありますが、同時に、

 

・その香りが、長年、どのように使われてきたか、また

・その香りが採れる植物がどんな姿をしていて、どんな環境で育っているものなのか

 

を知ることも、香りを捉える上で、とても重要な手助けになるような気がしています。

 

こちらは、調香作業の様子です。12種類の天然香料(精油)の中から、杉の香りに合わせる香り2種類を、ご自身で選び出し、ブレンドしていただきました。

 

 

 

最後に、杉の香りの生産者である、天竜T.S.ドライシステム協同組合(浜松市天竜区水窪町の製材所)の榊原さんに、木にまつわる現場のお話をしていただき、香りのルーツにも触れていただきました。

 

精油の世界でも、「トレーサビリティ」という言葉があり、その精油の出所を明確にしようという動きがありますが、こちらの製材所の木も、1本1本、バーコードで管理されているんですよ。

 

また、月の満ち欠けに合わせて伐採をしたり、丁寧に時間をかけて自然乾燥をしたり…

 

もともと持っている自然のリズムを大切にする考え方は、アロマセラピーにも通じるものがあるなあと、感じています。植物も、人間も、同じ生き物ですから、当たり前のことなのもしれませんが!何より、個人的には、杉の凛とした立ち姿がたまらなく好きですね。榊原さん曰く、よく「特徴がない」と言われてしまうこの杉の木の香りですが、私は、その「特徴の無さ」が、「一番の特徴」だと、思っています。

 

『この香りじゃなきゃダメ』ということはないけれど、ただ、そこに立っているだけで、静かな存在感がある。ぶれない意思がある。アイデア次第で、何にでもなれるし、どこへでも行ける。

 

私の中で、杉の幹のアロマは、そんなパーソナリティを持った香りです。(香りのイメージが、植物の姿とリンクするのが、またおもしろいところですね。)

 

こちらが、榊原さんのお話と、材の比較(「天然乾燥」と「人工乾燥」)の様子です。見た目だけではなく、香りの違いも、はっきりと感じ取ることができました。成分分析を見ると、良く知られた世界各地の精油に含まれる成分にはないもの(あまり聞いたことのないもの)も多くあり、その点では、オリジナリティのある香りと言えるかもしれません。個人的に、ネロリドールが(微量ですが)含まれていたのには驚きました。

 

 

 

 

たくさんのご参加をいただき、誠にありがとうございました。開催するたび(香りをことばにし、人の前で発するたび)に、私自身、新たな発見がたくさんあり、その魅力や可能性に、いつもワクワクしています。今後の講座も一つ一つ、丁寧に企画・実施していきたいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

追記:2020年2月14日

教材としてお配りした「TREE WATER」が紹介されています。

(静岡新聞朝刊 9面)

 

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【今後の講座スケジュール】

≪1日講座≫香りから広がる世界」 会場:SBS学苑遠鉄校

 

●3/8(日)~春のロールオンフレグランス2種~≪受付中≫
こちら


●6/7(日)~香りの地産地消を実践しよう~
詳細後日