残業中に不意に携帯が鳴った。

相手は高校の時のクラス委員長からだった。

「夏に集まった時に話してた”先生方を呼んで”ってコトになったから、連絡しといて。あと、折角だからみんなで正装して記念写真とかも撮るからそれも言っといて。」


いつもは開催の1週間前に連絡が来るもんだから、俺が他に連絡する頃には大概予定が入っててほとんどが欠席だった。

ひどい時は「明日やるから」みたいな時もあった。

「連絡する俺の身にもなってくれよ」と板挟みとなる中継役が嫌になった時もあった。

が、俺が連絡する奴らの中でコンスタントに出席してるのが俺だけなものあり、やはり俺が中継役をするしかない状況ではあるのだが…


とりあえず日時・場所を確認して、職場のPCからメール。

毎年盆と年末か年始の年2回のペースで毎年やっているが、今まで先生方を呼んだことは無い。

ここ数年は集まりが急激に悪くなり、10人いくかいかないか程度だ。

初めはクラスの8割くらいは来てたのだが、転職、結婚、転勤等で最近では集まる面子はほぼ同じ。

一人か二人が「お~久しぶり」って感じだった。


日中昨日送ったメールを確認すると、今までなかなか来れなかった奴等からの「出席」メールがわんさか来てた。

昼前までにほぼ全員からの返信があったが、一人だけメールすら見ていない輩がいた。

「いっつも直TELしないと返事こないんだよなぁ」

と思いつつ、忙しさに紛れそのことを忘れていた。


まぁ何だかんだ言って、今年の暮れは昔話に花が咲きまくりそうだ…w

前日の飲み会による気だるさにより、昨日は家でマッタリ過ごす。

何気にTVを付けるとJリーグ最終節の鹿島-清水戦が始まっていた。

鹿島のユニフォームにある九つの星。

それはしばらく前から変わっていなかった。

「あと一つ」

鹿島の選手ならびにサポーター達は数年間歯痒くしてきた事だろう。


今年のJリーグは、昨年からのレッズVSガンバの二強の様相が色濃く出ていた。

俺はエスパルスのファンであるため『優勝は無理でも上位にいるだけでいい」と思い、半ばJは見ていなかった。

まして、開幕5戦勝ち星無しの「古豪」鹿島については、ことさら興味はなかった。


レッズの相手は、J2降格が決まり、意気消沈気味の横浜FC。

誰が見てもレッズの勝利は動かないものととして見られていた。

そんな折に目にした光景…

「レッズ、横浜FCに破れる!!」映し出された鹿島スタジアムのオーロラビジョン。

奇跡の瞬間を目の当たりに、何故か心が弾む。

開幕5戦勝ち星に見放され、誰もが上位浮上で満足と思っていたところを終盤怒涛の9連勝。

誰がこのシナリオを予想していただろうか?


「ついに10冠達成!!」

TVモニターに映し出され、歓喜に沸く選手・サポーター達。

人は奇跡に心を打たれる。当たり前過ぎる結果にはてんで興味は湧かない。


しかし、俺は今年の優勝だけに感銘した訳ではない。

J発足後、Jの顔としてJを引っ張ってきた鹿島が、「優勝」という栄冠から見放されての数年間。

総合力では、柳沢や小笠原が戻ってきたとはいえ、ガンバ・レッズとは離されてると見えたここ数年。

気付けば「古豪」というイマイチなレッテルが貼られていた。

そして開幕からの連敗。

俺の中からは、完全に鹿島は消えていた。

しかし、選手・ファンの想いは現実のモノとして最終節に歓喜のフィナーレを迎えた。


「信ずればいずれ報われる」


この言葉が不意に脳裏を掠めた。

「希望」と言う言葉を日々の生活から放り捨てていた最近。

半ば諦めていたモノに対して取り組むキッカケが貰えた気がするこの一戦。

サッカーが好きで良かったと思え、色んなコトに前向きに行ける様な、そんな気持ちになれた最終節だった。

夕方急遽飲み会のお誘いがあった。

いつもの仲間との時間に日頃の鬱憤でも晴らそうかと快諾。


メンツはいつもの男一色ではなく、職場で一緒の娘から面識のある程度の娘といった感じで大所帯となっていた。

案の定かなり盛り上がり、二次会でカラオケへ行った。

仕事上あんまり付き合いがある訳でもないが、何度か一緒に飲んだ年下の彼女と俺の隣でいい感じで話してた。

熱唱中に財布を抜き取られ、ニコニコしながら彼女は財布と何故かペンを持っていた。


そのまま盛り上がってると、最近まで同じ職場に居た年上の彼女が合流してきた。

最近の状況等を聞くと、彼女は旦那と別れシングルマザーとして働いているとのコトだった。

そんな彼女が不意に

「前々から思ってたんだけど、めっちゃタイプなんだよね」

と俺に囁いて来た。

俺としても彼女は文句の付けようの無いくらいの直球ど真ん中のタイプである訳だが、悪いクセが出てしまう。

変に先を考えてしまい、その場を適当に受け流してしまった…


宴も終焉を向かえ、建物の外で最後の語り合いが始まっていた。

その時年下の彼女がバックを忘れ、ボックスに戻って一緒に探してたため、二人が最後に出てきた。

建物内の階段付近で待ってた彼女の先輩から不意に

「あんた達付き合っちゃいなよ?」

と言われ、彼女は

「いいですよ」

と笑顔で答えていた。俺も断る理由も無いため

「いいよ」

と言ってしまう。

まぁ飲みの席でのコトだし、彼女も本気で考えてはいないだろう。


そんなこんなで無事お開きとなり、したたかに酔った俺は家について即座に布団へ倒れ込む…


朝、喉の痛みで目が覚めて、おもむろに財布を開けてみた。

「なんじゃこりゃ?」

財布の内側に年下の彼女がお絵描きしていた。しかもドラえもんやらオリジナルキャラやら内側一杯に…

「レジの前で財布広げられないじゃないか…」

買って半年位の天然皮革の二つ折りの財布で、最近やっといい色になってきた感があったのに…


そんなこと考えながら、昨日のコトを思い出す…

年下の彼女。終始いい感じで今度後輩のお勧めの店に行く約束をしたりでいい感じ?

年上の彼女。職場に居た時から「タイプだなぁ」と思ってただけに、内心がッツポーズ。けど、後々を考えちゃうと…?


けど、酒が入ってるとホントかウソかマジでわからない。

俺的にはどっちもホントであったらうれしい悩みとなり、今後にメッチャ期待したいのだが…

願わくはどっちもウソではないように…


このストーリーの結末はいかに!?