運転中に不意に昔のコトが映画のワンシーンのように鮮明に脳裏に映し出された。


数年前の冬の出来事だった。

前の職場で一緒だった彼女と転勤先で会い、久々に二人で飲んで彼女を家まで送って行った。

彼女は特に意識してた訳でもなく、気の会う友人としての会話で道中盛り上がりながら家の前に着く。

不意に電柱の下で彼女が立ち止まる。

小雪が舞う中歩いてきたからだろう。

彼女の前髪が凍って、電柱の灯りに照らされキラキラと輝いていた。

何気にマジマジと見つめてしまい、微妙な空気が流れた…

しかし、その場は何事も無かったかのように彼女は自分の家の前まで歩く。

その刹那、身体が無意識に彼女を抱きしめていた。

沈黙し合う二人…

時間としては僅かな時間だったと思う。

彼女は不意に腕からスルリと抜け出しこう言った。

「家上がってく?」

彼女に彼氏がいるのは判ってた。

しかし、一歩踏み出す勇気が無かった・・・

「ごめん…明日早いから…」



ここまでのシーンがコマ一コマ(一部無意識に美化していたかも知れないが)脳内のスクリーンに映し出された。

「なんで今頃…」

信号待ちの時間にボソッとつぶやいてしまった。


彼女はその一年後に結婚したと友人から聞いた。

「もし、あの時に動いてれば…」

今とは違う自分が居たかも知れないし、違わないかも知れないが無性に今の自分が虚しく思えた。

若い頃はある意味「怖いもの知らず」の「わかんないのが当たり前」が通じてた。

中堅となった今は「石橋を叩きまくって渡る」コトに時間を費やす。

「解ってて当たり前」なのに未だに「解らないことだらけ」の仕事に時を浪費してる。


「時間を使う=考える」は正しい答えじゃない。

「時間を使う=前に進めていない」と頭では理解してる。

しかし、前に進むコトをせず、後ろばかり振り返る・・・


人を引っ張り込む力量が無いことは解ってる。

誰も俺に「フロンティア」になれとは言っていない。

セピアに染まった過去に縋るつもりは無い。

回想に老け込む歳でもない。

そんなコトは解ってる。


ただ前へ進むだけと周りも言うし、自分でも理解はしている。


Break Through

ただ前へ・・・

斜めでも前へ・・・

ゆっくりでも前へ・・・


明日から前を向いて歩こう。

ムーンウォークは得意じゃない。


止まってしまったモノクロはいつでも見れる。

これからは動き回るカラーを貪欲に取り込んで行こう。