運転中に不意に昔のコトが映画のワンシーンのように鮮明に脳裏に映し出された。


数年前の冬の出来事だった。

前の職場で一緒だった彼女と転勤先で会い、久々に二人で飲んで彼女を家まで送って行った。

彼女は特に意識してた訳でもなく、気の会う友人としての会話で道中盛り上がりながら家の前に着く。

不意に電柱の下で彼女が立ち止まる。

小雪が舞う中歩いてきたからだろう。

彼女の前髪が凍って、電柱の灯りに照らされキラキラと輝いていた。

何気にマジマジと見つめてしまい、微妙な空気が流れた…

しかし、その場は何事も無かったかのように彼女は自分の家の前まで歩く。

その刹那、身体が無意識に彼女を抱きしめていた。

沈黙し合う二人…

時間としては僅かな時間だったと思う。

彼女は不意に腕からスルリと抜け出しこう言った。

「家上がってく?」

彼女に彼氏がいるのは判ってた。

しかし、一歩踏み出す勇気が無かった・・・

「ごめん…明日早いから…」



ここまでのシーンがコマ一コマ(一部無意識に美化していたかも知れないが)脳内のスクリーンに映し出された。

「なんで今頃…」

信号待ちの時間にボソッとつぶやいてしまった。


彼女はその一年後に結婚したと友人から聞いた。

「もし、あの時に動いてれば…」

今とは違う自分が居たかも知れないし、違わないかも知れないが無性に今の自分が虚しく思えた。