■ネコ 保護猫・后梅ちゃん貧血・改善の理由 #再生不良性貧血#エクソソーム注射#貧血 | まねき猫ホスピタル院長 獣医師・石井万寿美 ペットのいる暮らし

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小動物臨床をしている獣医師です。書くことが好きで本も書いています。自分の勉強したことを伝えて、少しでも世の中に還元できれば、こんな嬉しいことはありません。

 

↑寒くなってきたので、服を着せてもらっている后梅ちゃん

 

ビタミンアカデミー 健康な赤血球に必要な栄養素は? のサイトより

 

保護猫・后梅ちゃんの貧血が、改善された理由をお話します。

 

后梅ちゃんが、来院したときの様子を簡単にまとめると

・目ヤニ

・舌が潰瘍のため 猫カリシウイルス感染症

・貧血

・貧血なのに、網状赤血球数少ない

・痩せている

 

●私たちの治療

・ステロイド剤

・エクソソームの注射

(もちろん、飼い主さんは、高栄養のキャットフードを選んでいます。)

 

、貧血が改善されました。

治療したときは、貧血なのに網状赤血球数が少なかったです。

上のイラストを見ていただければ、わかりますが、

赤血細胞は、以下のように成熟します。

 

幹細胞→前駆細胞→前赤芽球→赤芽球→網状赤血球→赤血球

 

最終段階の後、この細胞は骨髄から放出されるため、新しく循環する赤血球には約1%の網赤血球が含まれます。1~2日後、これらは最終的にエリスロサイト、すなわち成熟した赤血球になるのです。

 

つまり貧血のときは、このような過程を経てじっくり熟成する時間がないので、末梢血液に網状赤血球がたくさん出るわけです。

 

しかし、貧血が改善されると、急いで未熟な網状赤血球を出さなくもいいので、網状赤血球数が減ります。

 

后梅ちゃんの血液検査は以下のようになっています。

         2022,09,03   2022.10,08

SAA              4,3μg/ml     3.8未満

網状赤血球数  37,800    6,500

 

9月3日は、貧血しているのに、網状赤血球数が少ないので、骨髄が正常に働いていなかったのです。

 

貧血がほぼ改善されたので、いそいで網状赤血球を末梢血液に放出しなくても大丈夫になったのです。

 

もちろん、后梅ちゃんは、お元気のご様子。

 

●后梅ちゃんの貧血の原因は?

 

野良猫なので、栄養状態が悪かったのです。

赤血球の成熟には、ビタミンB12(コバラミン)とビタミンB9(葉酸)が不可欠であったけれど、正常量を摂取できず、赤血球形成の過程で成熟不全が起こり、臨床的には網赤血球が異常に少ない状態である網状赤血球減少症となっていました。

 

●いまの獣医学のすばらしいところ

 

私たちの治療には、エクソソームの注射という武器があります。

成長因子が入っているので、子猫のときに成長がうまくいかない子でも補うことができるようです。

 

子猫にエクソソームの注射を使ったのは初めてなので、后梅ちゃんだけがよい結果が出たのかもしれませんが、症例を増やしていきます。

 

 

 

血液の病気のもふもふちゃんの飼い主さんには、おすすめです。