まねき猫ホスピタル院長 獣医師・石井万寿美 ペットのいる暮らし

まねき猫ホスピタル院長 獣医師・石井万寿美 ペットのいる暮らし

小動物臨床をしている獣医師です。書くことが好きで本も書いています。自分の勉強したことを伝えて、少しでも世の中に還元できれば、こんな嬉しいことはありません。

 

 

一般的な腎不全の治療をされて、調子がよくならない子が多く来院されています。

慢性腎不全の考え方


「腎臓そのものの病気」だけでなく、全身の代謝破綻の結果
として捉えます。

治療の柱は「腎臓を無理に働かせる」のではなく、

  • 細胞レベルでの代謝を立て直す

  • 酸化ストレスと慢性炎症を抑える

  • 不足している栄養素を“十分量”補う

ことです。

具体的には次のようなアプローチが取られます。

  • 高たんぱくを一律に制限しない
    → 良質なたんぱく質は細胞修復に必須。むしろ低栄養が腎機能低下を加速すると考えます。

  • 抗酸化栄養素の補給
    → ビタミンC、E、CoQ10、αリポ酸など

  • エネルギー代謝の改善
    → ビタミンB群(特にB1、B6、B12、ナイアシン)

  • ミトコンドリア機能のサポート
    → 5-ala、CoQ10

  • 慢性炎症の制御
    → ω3脂肪酸、ビタミンD、腸内環境の改善

「老廃物を減らす」よりも、「老廃物を生みにくい体にする」発想です。


 

「不可逆的に壊れた臓器」ではなく、「栄養欠乏によって機能不全に陥った状態」
と考えていました。

特に重視していたのは次の点です。

  • 腎不全=低たんぱく食という常識への強い疑問
    → たんぱく不足こそが細胞再生を止め、病気を固定化すると主張

  • ビタミンCの十分量投与
    → 抗酸化・抗炎症・毛細血管保護を重視

  • 「検査値より症状を見よ」
    → BUNやクレアチニンの数値だけで治療を判断することを戒めています

  • 病気は薬で治すものではなく、細胞環境を整えて治る方向へ導くもの

「栄養状態が改善すれば、進行は遅らせられる。場合によっては症状は大きく改善する」
と考えています。


飼い主さんのできること

 

腎臓だけを見るな、細胞を見よ

という姿勢です。点滴ではビタミンB群などの水溶性ビタミンを入れることはできますが、油性のビタミンDやEは内服になります。動物病院で相談してそのような内服ももらってくださいね。

 

慢性腎不全は「治らない病気」ではなく、
どう支えるかで、生活の質も寿命も大きく変わる病態です。

 

 

 

 

私たちの動物病院には、ステロイド剤を頻繁に使用する動物病院から転院されてくる飼い主さんが多くいらっしゃいます。

 

もちろん、私たちの動物病院でもステロイド剤を使用することはありますが、その場合は必要最小限の量にとどめるよう心がけています。

 

今日は、そのステロイド剤についてお話しします。

 

体内で作られるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の材料には「コレステロール」が必要です。そして、この代謝にはビタミンEが関わっています。この点は、ぜひ頭に置いておいてください。

 

ステロイド剤が有効とされる病気は200種類以上あるといわれています。

・喘息
・アトピー性皮膚炎
・慢性リウマチ
・リンパ腫

 

このように幅広い疾患に使われますが、コルチゾールの薬であるステロイド剤は、体内で分泌されるホルモンに比べて格段に作用が強いため、副作用も出やすいのが特徴です。

 

代表的な副作用として、以下のようなものがあります。

 

・クッシング症候群
 体内のタンパク質を分解してブドウ糖に変えるため、筋肉や内臓が萎縮してしまいます。

・糖尿病
 血糖値が上昇しやすくなります。

・尿量の増加
 腎臓での水分のろ過が促進されるためです。

・傷が治りにくくなる

 

こうした副作用があることを理解したうえで、ステロイド剤は使われているでしょうか。

 

ステロイド剤の副作用を軽減するために、ビタミンAが役立つ場合があります。
また、ステロイド剤を使用する前に、ビタミンEなどを取り入れることも一つの方法です。

今一度、ステロイド剤を使うということについて、立ち止まって考えてみませんか。

 

 

 

5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、腎臓病の文脈でも「補助的にどう使うか」が注目されています。

 

 

5-ALAって何?

5-ALAは体内にもともと存在するアミノ酸様物質で、
👇の材料になります。

  • ヘム

  • ミトコンドリアのエネルギー産生(ATP)

つまり、
👉 細胞の発電所(ミトコンドリア)を動かす土台


腎臓病との関係

腎臓病になると

  • ミトコンドリア機能低下

  • ATP産生低下

  • 酸化ストレス増加

  • 慢性炎症の持続

5-ALAはこれに対して、

期待される作用

  • ミトコンドリア活性化

  • エネルギー代謝の底上げ

  • 抗酸化酵素(HO-1など)誘導

  • 細胞ストレス耐性の改善

「腎臓を治す」というより
「腎細胞が働き続けられる環境を整える」イメージです。


人医療での知見

  • CKD(慢性腎臓病)で

    • 貧血

    • 倦怠感

    • 炎症マーカー
      への改善報告あり

  • 糖尿病性腎症との関連研究も進行中

※ ただし標準治療ではなく補助療法


犬・猫の腎臓病では?

高齢

  • 食欲低下

  • 抗酸化療法をしても反応が鈍い
    子では検討余地あり。

併用されやすいもの

腎臓病で5-ALAを使うなら👇とセットで考えることが多いです。

  • ビタミンE

  • CoQ10

  • L-カルニチン アミノ酸(リジン+メチオニン)由来のアミノ酸様物質

  • EPA / DHA

👉 「ミトコンドリア+抗酸化」ラインの一員


飼い主さんのできること

 
  • 5-ALAは
    腎臓病の“底力”を支える補助栄養素

  • 進行を止める薬ではない

  • QOL・代謝・細胞エネルギーに寄与

一般的な治療も必要ですが、このような分子栄養学の知識を持って治療をしてあげてくださいね。

 

腎臓病の治療をしている子は多いです。

一般的な治療だけでは、なかなかよい成績ができないので、補完療法として ビタミンEと一緒に使う抗酸化サプリメントの組み合わせは、酸化ストレスを多面的に抑えるために非常に有効です。
犬・猫双方について獣医療でよく用いられる成分と 目安量 を整理しました。


🐶🐱 腎臓病でよく使われる抗酸化サプリ成分

① ビタミンE(抗酸化)

  • 犬:2〜5 IU/kg/日

  • 猫:10〜30 IU/日
    👉 細胞膜の酸化予防


② ビタミンC(抗酸化、再生補助)

  • 犬:10〜50 mg/kg/日

  • 猫:5〜25 mg/日
    👉 ビタミンEの還元再生を助け、酸化耐性を高める

⚠ 高用量は尿pH・結石に注意(特に猫)


 

③ コエンザイムQ10(Mitochondrial support)

  • 犬:1〜3 mg/kg/日

  • 猫:1〜2 mg/日
    👉 細胞内エネルギーと抗酸化作用をサポート


④ オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)

  • 犬:EPA 40〜100 mg/kg/日程度

  • 猫:EPA 30〜50 mg/日程度
    👉 炎症を抑え、腎血流・免疫の改善
    (フィッシュオイル or クリルオイル由来)


⑤ α-リポ酸 / N-アセチルシステイン(NAC)

→ グルタチオン合成を強化

  • NAC(犬):10〜50 mg/kg/日

  • NAC(猫):10〜30 mg/日
    👉 強力な抗酸化系の補完

 補完療法で意識したいポイント

🧠 ① 多面的な抗酸化

単一成分よりも 複数の抗酸化経路 をカバー:

  • 細胞膜保護(E)

  • 水溶性抗酸化(C)

  • エネルギー代謝 + 抗酸化(CoQ10)

  • 炎症抑制(EPA・DHA)


🩺 ② バランス重視

過剰投与は

  • 脂溶性ビタミンの蓄積

  • 競合する栄養素の吸収阻害
    を引き起こすため、総合バランスで考えるのがコツ。


🐱🐶 ③ 犬猫の注意点

  • 猫はビタミンCを内因性に合成できるため、外因性 high dose は慎重に

  • EPA・DHA は尿pHを酸性化することがあるため、結石リスク評価も併せて


📌 具体的な組み合わせ(例)

軽度〜中等度 CKD の場合:

  • ビタミンE

  • オメガ3(EPA・DHA)

  • CoQ10

慢性炎症が強い場合:

  • 上記に加えて

  • ビタミンC(低用量)

  • NAC / α-リポ酸

サプリ効果の評価には

  • 血液検査(BUN/Cre、SDMA)

  • 炎症反応(SAA CRP)

  • 体重・食欲・活動性
    を定期的にチェック。


📝 最後に

サプリは薬ではなく 補助療法 です。
安全に使うには、獣医師と相談しながら血液検査を見ながらしていきましょうね。

 

このような分子栄養学の知識を持って、治療することは大切ですね。

 

慢性腎不全の治療は、一般的には以下です。

・皮下点滴

・内服

・腎臓用の処方食

 

しかし、このような治療だけをしていても症状は進んでいきます。

 

そこで、今日は、慢性腎不全の治療にビタミンEを入れることをお話します。


ビタミンEと腎臓病は、人でも動物でも「補助的だけど意味のある関係」があります。


ビタミンEとは?

ビタミンEは脂溶性の強力な抗酸化ビタミンで、主な役割は

  • 細胞膜を酸化ストレスから守る

  • 炎症を抑える

  • 血管内皮を保護する

腎臓病では、この「抗酸化作用」がとても重要になります。


腎臓病と酸化ストレス

慢性腎臓病(CKD)では

  • 老廃物の蓄積

  • 慢性炎症

  • 活性酸素の増加

が起こり、腎臓そのものが酸化ダメージを受け続ける状態になります。
そのため、腎臓病は「酸化ストレスの病気」とも言えます。

👉 ここでビタミンEの出番です。


ビタミンEが腎臓に与える良い影響

研究や臨床経験から、次のような作用が期待されます。

① 腎臓組織の酸化ダメージを軽減

  • 糸球体や尿細管の細胞膜を守る

  • 腎機能低下の進行を緩やかにする可能性

② 炎症の抑制

  • CRPなど炎症マーカーの低下

  • 「腎臓病+慢性炎症」の悪循環を断ち切る補助

③ 動脈硬化の予防

腎臓病では血管障害が進みやすく、
ビタミンEは

  • 血管内皮の保護

  • 微小循環の改善
    にも寄与します。


人の腎臓病での知見

人医療では、

  • 透析患者でビタミンE不足が多い

  • 酸化ストレス軽減目的で補充されるケース

が知られています。
また「ビタミンEコーティング透析膜」が使われるほど、
腎臓病と酸化の関係は重要視されています。


犬・猫の腎臓病では?

犬猫の慢性腎臓病でも

  • 食欲低下

  • 脂質代謝異常

  • 抗酸化力の低下

が起こりやすく、

ビタミンEは“治療の主役ではないが、土台を支える存在”です。

✔ 特に

  • シニア期

  • がんや慢性炎症を併発している

  • オメガ3脂肪酸を使っている場合
    は、ビタミンE不足に注意が必要です
    (※脂質を酸化から守るため)


注意点

  • 脂溶性ビタミンなので過剰摂取はNG

  • 単独大量投与より
    👉 ビタミンC・セレン・CoQ10などとのバランスが重要

  • 腎臓病のステージにより使い方が変わる


まとめ

ビタミンEは

  • 腎臓病の進行を止める薬ではない

  • でも
    👉 「炎症と酸化を抑え、腎臓がこれ以上傷つくのを防ぐサポーター」

 

 

それでは、どれだけビタミンEを与えるといいか?

 

犬・猫のビタミンE投与量は「安全域が広いけれど、腎臓病では“控えめ・継続”が基本」です。


犬のビタミンE投与量(目安)

🔹 健康維持・抗酸化目的

1日 1~2 IU/kg

例)

  • 5kg → 5~10 IU

  • 10kg → 10~20 IU


🔹 慢性腎臓病・慢性炎症・シニア

1日 2~5 IU/kg

例)

  • 5kg → 10~25 IU

  • 10kg → 20~50 IU

👉 腎臓病では上限寄りにしすぎないのがコツです。


🔹 がん・強い酸化ストレスがある場合(獣医管理下)

最大 10 IU/kg/日 程度まで

※長期高用量は

  • 凝固異常

  • 他脂溶性ビタミンとのバランス崩れ
    に注意。


猫のビタミンE投与量(目安)

猫は犬より慎重に使います。

🔹 健康維持・抗酸化目的

1日 5~10 IU/猫


🔹 慢性腎臓病・シニア猫

1日 10~30 IU/猫

👉 体重換算よりも「1頭あたり」で考える方が安全です。


🔹 脂肪肝・慢性炎症・酸化ストレスが強い場合

最大 50 IU/日 程度まで(短期)

※長期連用は避け、定期的な評価を。


投与のポイント

食後に投与(脂溶性で吸収UP)
✔ オメガ3(EPA・DHA)使用時は必須併用
✔ ビタミンE単独より
👉 C・セレン・CoQ10との併用が理想
✔ 腎臓病では
👉「少量を長く」が正解


注意点

  • 下痢・軟便

  • 血液凝固への影響(まれ)

  • ビタミンA・Kとの拮抗

 


まとめ

  • 腎臓病:2~5 IU/kg/日

  • 腎臓病:10~30 IU/日

ビタミンEは
🟢 腎臓を“治す”ものではない
🟢 でも炎症と酸化から守る名脇役

 

単位について

ここ、めちゃくちゃ大事なポイントなので正確にいきますね。


結論から

ビタミンEの「IU(国際単位)」は、形(種類)によってmgが違います。

🔹 天然型(d-α-トコフェロール)

👉 10 IU = 約 6.7 mg

🔹 合成型(dl-α-トコフェロール)

👉 10 IU = 約 9.0 mg


なぜ違うの?

ビタミンEは

  • 天然型(d-α):体内利用率が高い

  • 合成型(dl-α):利用率が低い

 

このような分子栄養学の知識を入れて、慢性腎不全の治療をしていきましょう。