新年から大きな出来事が続いていて。
私は運輸関係の仕事をしているので、昨日の羽田の事故は他人事とは思えず、ニュースを見続けていました。
国土交通省航空局と海上保安庁の方が、昨夜9時頃?に、日本航空が11時頃?にそれぞれ記者会見を行っていました。あのタイミングで、それもマイクの前に立つのは組織上層部の方では、まだ十分な情報が届いていないと思われます。
私も現場の担当者として何度か事故状況を纏めたり報告したりしたことがあるのですが、数時間では事故に関する情報を収集するのが精いっぱいで、それを集約して記者会見に必要な情報を纏めるのは極めて困難です。
人身に関わる事故、それも今回のような重大事故では、管制・乗務員等の関係者からの事情聴取はまだ十分にできていない状況でしょうし、そもそも事故原因の調査を行う運輸安全委員会が既に動き出している以上、国交省・海保・日航の関係者は事故調査に影響を与えるような発言はできないと思います。
また全てではないですが、マスコミの質問の内容は、下調べも満足にしておらず、航空機の運航に関しても知識がない記者が上から目線で質問しているのが分かる低レベルなものでした。
特に、日本航空の記者会見で、共同通信のY記者から「最初に謝罪された意図は何ですか」との質問には呆れてしまいました。何を引き出したかったのか…。
そもそも事故原因に関する質問は、記者会見を行った組織ではなく、運輸安全委員会に対して行うべきものです。
その辺りもわきまえないで、不躾な質問を投げつける記者達の姿を見て、気分が悪くなりました。
と、愚痴はこの辺りにして、いつものブログに戻りたいと思います。
年末年始で帰省されている方々も多いかと思います。
例えば、大阪-福岡を移動する場合、新幹線を使う方が多いです。
yahooの路線検索で、本日の状況を見ると
大阪駅 9:00-新大阪駅 9:03 JR京都線新快速
新大阪駅 9:17-博多駅 11:45 山陽新幹線 のぞみ7号
ということで、3時間弱で大阪駅から博多駅まで移動が可能です。
新大阪駅の東海道・山陽新幹線「のぞみ」
では、大正14年ではどのようになるでしょうか?復刻版の時刻表から拾ってみましょう。
時刻表復刻版 1925年4月号
陸路で見てみると、こんな感じです。
大阪駅 9:02 -岡山駅 (12:36) 東海道・山陽本線 急行5列車
岡山駅(12:42) -広島駅 (16:32) 山陽本線 急行5列車
広島駅(16:38) -下関駅 21:38 山陽本線 急行5列車
下関駅 22:23 -門司駅 22:44 鉄道連絡船関門航路7便
門司駅 23:05 -博多駅 翌 0:46 鹿児島本線 急行7列車
陸路では16時間弱ほどかかり、博多着は真夜中になります。
蒸気機関車「C51」形
(引用:「日本国有鉄道百年写真史」1972年10月、日本国有鉄道、P.193)
急行用2等ボギー客車
(引用:「日本国有鉄道百年写真史」1972年10月、日本国有鉄道、P.194)
海路ではどうでしょう。
非連帯航路(鉄道院との連絡運輸をしていない航路)のページに大阪商船の大阪-門司間の航路が記載されています。
大阪(天保山) 19:00
→神戸 21:30
→高松 翌 4:30
→三島 翌 11:00(伊予三島)
→今治 翌 16:40
→高浜 翌 20:30
→門司 翌々 7:00
大阪から門司まで、36時間かかっています。
ここから、列車に乗り換え、
門司 7:20 -博多 9:55 鹿児島本線63列車
計、38時間半の長旅になります。
なお、この航路は昨年末に取り上げた「屋島丸」などで運航されていました。
大阪商船・客船「屋島丸」
(引用:世界の艦船別冊「日本の客船1・1868-1945」野間恒/山田廸生、1991年7月、海人社、P.193)
また、連帯航路(鉄道院との連絡運輸をしている航路)では、大阪-別府間、現在の「さんふらわあ」が運航されている航路についても記載があります。
大阪 15:30
→三宮 19:30
→別府 翌 7:30
こちらは関西から別府へ直行のため16時間で別府へ到着します。
大阪商船・客船「むらさき丸」
(引用:「図説 日の丸船隊史話」山高五郎、1981年7月、至誠堂、P.156)
大正期の別府港
(引用:「大分県案内」1921年3月、大分県協賛会、P.20
※国会図書館デジタルコレクション 書誌ID:000000999274)
別府からは、日豊本線で博多を目指すと
別府 9:16 -小倉 12:52 日豊本線248列車
小倉 13:58 -博多 16:14 鹿児島本線145列車
九州島内での列車移動に7時間弱。日豊本線には速達列車は一日1本のみで、別府発は15:27のため接続列車としては使用できません。
明治末期の博多駅(引用:Wikipedia)
(不明 - scanned from page 82 of "Tetsurin-no-Todoroki", パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6731459による)
このルートだと、大阪港から25時間弱となるので、航路のみで門司に行くより所要時間は短くなります。
現在の海路では、商船三井さんふらわあのフェリーに乗ると、
大阪(南港) 19:05 -別府国際観光港 翌6:55
所要時間は12時間弱。
商船三井さんふらわあ・フェリー「さんふらわあくれない」
別府駅から博多駅へは、特急「ソニック」で向かうと、
別府駅 7:22 -博多駅 9:39 特急ソニック8号
JR九州特急・白い「ソニック」(引用:Wikipedia)
(JKT-c - 投稿者自身による著作物, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14979669による)
計、14時間半ほどの旅となります。
なお、大阪-博多はWILLER EXPRESSなど、複数の高速バスが運行されています。
WILLER EXPRESS JH1552便
大阪(梅田)22:40 -博多バスターミナル 翌8:15
約9時間半の旅となります。
これらを比較すると、下図のようになります。
大正14年から見ると、陸路で1/5、海路では船に乗っている時間は3/4となっていますが、神戸に寄らないことと、別府への到着時間を調整している面もあると思いますので、ここは大きな差ではないと思います。その後の陸路が1/3になっているのが大きいですね。
また、夜行の高速バスが意外と時間が短いことが分かります。
今回は、平和な話題にしてみました。
また、あくまで復刻版の時刻表から時間を拾ったので、大正14年には他の方法もあったかと思います。
東京-福岡間は航空機になるかと思いますが、関西-福岡は現在でも結構選択肢があります。
時間さえあれば、色々と検討してみるのも面白いかもしれませんね。
【参考文献】
Wikipedia および