南太平洋海戦・空母「ホーネット」の拿捕が成功していたら… | 艦艇・船舶つれづれ

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本日はもう一本。昨日は4月18日、昭和17年の昨日に米軍によって行われたのが、ドーリットル空襲と呼ばれる空襲です。

ドーリットル空襲とは、米海軍の航空母艦「ホーネット」から発進したB-25双発爆撃機16機が、大東亜戦争勃発以来初めて帝国本土にたいして行われた空襲です。

 

昭和17年4月18日、航空母艦「ホーネット」を発艦するドーリットル隊のB-25(出典:Wikipedia)

(不明 - U.S. Navy photo 80-G-41197, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=118644による)

 

今回は帝国海軍の艦艇ではなく、敵国である米海軍の航空母艦「ホーネット」を取り上げます。

「ホーネット」は「ヨークタウン」級航空母艦の3番艦としてバージニア州のニューポート・ニューズ造船所で昭和16年10月に竣工します。ワシントン海軍軍縮条約の失効後に建造されたため、同型の2隻と比較し、設計が一部改正されています。

 

【要目】

 基準排水量:19,900トン、満載排水量:29,100トン、全長:252.2m、最大幅:34.8m、吃水:6.6m

 機関:パーソンズ式ギヤードタービン機関×4、推進軸:4軸

 主缶:パブコック&ウィルコックス式重油専焼水管缶×9

 出力:120,000馬力、速力:33ノット、乗員数:(戦時)2,919名

 兵装:12.7cm38口径単装両用砲×8、28mm4連装機銃×4、12.7mm単装機銃×24

     搭載機:85~90機

 ※出典:世界の艦船「第2次大戦のアメリカ軍艦」増刊第128集、No.829、2016年1月、海人社、P42

 

航空母艦「ホーネット」(出典:Wikipedia)

(USN - Official U.S. Navy photo 80-G-K-439 from the U.S. Navy Naval History and Heritage Command, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21352408による)

 

空母「ホーネット」の初陣は「ドーリットル空襲」です。この空襲で、日本側の被害は死者87名、重傷者151名、軽傷者311名以上、家屋全壊・全焼112棟(180戸)以上、半壊・半焼53棟(106戸)以上という被害を受けています。また、潜水母艦「大鯨」から航空母艦へ改装中の「龍鳳」が爆撃により損傷しています。

 

航空母艦「龍鳳」(出典:Wikipedia)

(不明 - 呉市海事歴史科学館所蔵品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3638939による)

 

その後、「ホーネット」はミッドウェー海戦に参加します。「ホーネット」の航空隊は帝国海軍の航空母艦への攻撃には参加できませんでしたが、衝突により損傷し撤退が遅れていた一等巡洋艦「最上」「三隈」に対し航空母艦「エンタープライズ」の航空隊と共に攻撃を行い、「三隈」を撃沈、「最上」を大破させる戦果を挙げています。

 

ミッドウェー海戦で攻撃を受け沈没寸前の一等巡洋艦「三隈」(出典:Wikipedia)

(A.D. Brick or CP(PA) J.S. Mihalovitch, USN - U.S. Navy photo 80-G-414422, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=804143による)

 

太平洋に展開する米航空母艦は、珊瑚海海戦で「レキシントン」が、ミッドウェー海戦で「ヨークタウン」が沈没し、さらに昭和17年8月に「エンタープライズ」と「サラトガ」が損傷、9月には「ワスプ」が「伊号第十九」潜水艦の雷撃により沈没し、行動可能なのは「ホーネット」のみになります。

 

米海軍機動部隊は復帰した「エンタープライズ」と「ホーネット」で編成され、昭和17年10月25日に帝国海軍の機動部隊を発見しますが一度見失います。翌26日に再び帝国海軍の機動部隊を発見し、南太平洋海戦の火蓋が切られます。米海軍機動部隊は早朝より第1次攻撃隊を発艦させ、航空母艦「翔鶴」に450キロ爆弾4発を命中させ大破させる戦果を挙げます。さらに、3次攻撃隊は一等巡洋艦「筑摩」に爆撃を行い損傷させます。

 

しかし、「ホーネット」は自軍の攻撃隊と入れ違うように襲来した帝国海軍機動部隊に発見されます。この時一緒に行動していた「エンタープライズ」がスコールの中に逃げ込んだことから、「ホーネット」は集中攻撃を受けてしまいます。帝国海軍の第1次攻撃隊により250キロ爆弾3発と魚雷2本、また艦上爆撃機と艦上攻撃機各1機の体当たりを受け、「ホーネット」は火災を発生するとともに機関が停止、11度傾斜して航行不能となります。

 

帝国海軍機動部隊の攻撃を受ける航空母艦「ホーネット」(出典:Wikipedia)

(不明 - U.S. Navy photo 80-G-33947, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=354836による)

 

「ホーネット」は駆逐艦の支援により消火に成功、「ホーネット」を救うべく重巡洋艦「ノーザンプトン」によりが曳航が試みられます。曳航用のワイヤーが切れたことからやり直しをしている最中に、帝国海軍の第2次攻撃隊が来襲、魚雷1本が命中します。

さらに帝国海軍の第3次攻撃隊により爆弾3発が命中し再度火災が発生し傾斜も増大したことから、米海軍は「ホーネット」の放棄を決定、米駆逐艦2隻により魚雷9本を命中させます。それでも「ホーネット」は沈まないため、5インチ砲弾430発を打ち込みますが、それでも沈みません。

そうしているうちに日本艦隊が接近してきたため、米駆逐艦は「ホーネット」を残して退避します。

 

大きな損傷を受け放棄された航空母艦「ホーネット」(出典:Wikipedia)

(U.S. Navy - U.S. Navy photo [1] from cv6.og, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=872033による)

 

前進中の帝国海軍第三艦隊は、連合艦隊参謀長の宇垣少将からの「ホーネット」拿捕・曳航の要請により、駆逐艦「秋雲」と「巻雲」が拿捕に向かい炎上し漂流中の「ホーネット」を発見します。

 

一等駆逐艦「巻雲」(出典:Wikipedia)

(Shizuo Fukui - Kure Maritime Museum, Japanese Naval Warship Photo Album: Destroyers, edited by Kazushige Todaka, p. 108, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5814411による)

 

2隻の駆逐艦は、「ホーネット」に近づき拿捕・曳航を試みますが、排水量に差がありすぎ火災が広範囲に広がっていたことから断念し、魚雷で処分することとなります。

「秋雲」「巻雲」から発射された魚雷3本が命中し、「ホーネット」は10月27日午前1時35分サンタクルーズ諸島沖で沈没します。

 

ここで拿捕・曳航に成功していた場合、「ホーネット」は帝国海軍の航空母艦として研究対象となり、またあわよくば帝国海軍の航空母艦として就役していたかもしれません。

帝国海軍の航空母艦として「ホーネット」が「瑞鶴」や「大鳳」などと帝国海軍機動部隊の一翼を担って活躍する場面を思い浮かべるのも一興ですね。