【完成】1/9 MENGMODEL Kawasaki Ninja H2 | Children's Beat

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模型製作に関する記事をていねいに綴っていきます。

いいところもあれば悪いところもある。

それでもやっぱり大きいことはいいこと、というお話ー


年末年始って、普段作らない人に限ってなんだか無性に模型を作りたくなりませんか?

わざわざエアブラシを稼働させるのは気が重い。

かといって無塗装パチ組みでは貴重な在庫を無駄に消費するようで気が引ける。


せっかくなら制作のカロリー低めで満足感のあるものを作りたいな…


そんなとき、積んでてよかったプリペイントモデル。


よくできたダイエッター御用達商品のようなローカロリーハイプレジャーな模型、それがモンモデルの1/9バイクモデル(ただし結局少し塗装した)


カワサキニンジャH2、お披露目です。



まずはキットの見本をご覧ください。

パッケージ画像




メーカー完成見本



この宣材写真だけ見てると正直「…ふーん」っていうくらいの感想しか出てこないってものですが、ブラックメッキのポテンシャルを舐めてはいけません。

ここにモデラーの手心が加わることで、このキットは圧倒的な存在感を放つ作品に変貌するのです。



2024年の大晦日に着手して、およそ1週間で完成させました。


やっぱりいいぞ、H2。

(手前に写るのが4年前に制作したH2R)


4年前に手がけた同じモンモデルのH2Rの、これはバリエーションキットであります。しかしながら要所要所で異なるディテールがモデラー心を刺激しまくります。いいぞもっとやれ。


前回はこのキットの存在意義と主に良いところをしっかり記事に書いたので、今回はここがダメだよなところを綴りつつ、それでもやっぱりネコ(H2)が好き、な感じにまとめていきたいと思います。



まず気になるのが前作のH2Rとの差異ですが、概ね以下のとおりとなります。


このキットで肝煎りとなる外装のメッキ処理がさらに黒さを増したブラックメッキ仕上げになっていたことともうひとつ、1作目のH2Rで不満と感じていたトレリスフレームの、合成着色料が大量に含有された舶来物の菓子のようなどギツイ黄緑色の塗色が、今作では本来の実車のトーンに近づけられたことが特に好印象でした。


他にヘッドライトハウジングを収めるためH2Rと形状の異なるアッパーカウル、左サイドのエアアウトレット、集合部からサイレンサーに至る触媒装置を含む排気系後端部、トレッドパターンが刻まれた合成ゴム製の前後タイヤ等が新規パーツとして同梱されます。

細かい部分でいえば前作H2Rでは単純な太めのゴムチューブ製とされていた右ウォーターラインがより形状を重視した結果プラパーツで追加されているところに好感を持ちました。


反対にイマイチだと感じたところも書いておきましょう。


まずネジですが、総じて短い上にネジ頭の精度も上等とは言い難い。

外装の固定など要所で使用するだけに、ここは同サイズで少し長めのできれば国産の良品を手配するだけでだいぶ組み立てのストレスが減ると思います。

(特にバックミラーとサイドスタンドをコネクトするネジはもう少し長さが必要)


メタルインレットシートは、粘着力がやや弱いのがイタイ。メッキパーツは仕上げとしてコーティング剤を塗布しますが(どうしても組み立て過程で指紋が付いてしまうため)、粘着力が弱く固定後もちょっとしたことで剥がれがちです。

幸いこのH2というモチーフはそのままでも情報量過多なので、意識的に着目しなければ全然気になりません。


タンクやシートカウルのエンブレムはキットパーツの表面に凹加工で彫刻してあるので、なくても問題ないと判断。それよりもモデル自体をピカピカに磨き上げたかったので今回はバックミラー面以外はオミットしました。


他にも嵌め合わせが曖昧なところもいくつかありましたが、今回は全体的に攻め過ぎずに「まぁこんな感じでいいでしょ」というところでそっとしておきました(←このキットを制作する上で精神衛生上大事)


さてここで、これらのconsなポイントがこのキットの存在価値に果たして影を落とすか?と問われれば、完成されたこの状態を見ればそんなものは瑣末な問題だとわかるはず。

このサイズ感でこの存在感は無二のもの。


あとは手を動かしてこのアイテムに付加価値を与えることができれば、さらに自分の好みに寄せた素晴らしいH2が手に入ることになる。そのための今回の記事というわけで、後半は少しだけ手を加えたその内容を記します。


カウル以外で目を引くのがエグゾーストシステムです。

キットパーツではプラモデルでは見慣れた厚みのあるシルバーメッキがかけられている状態ですが、ここを実車の画像を参考にグラデーション塗装してやることで、かなり印象が良くなります。

(制作途中画像)


全体をクリアーイエローでゴールドっぽく着色した後、クリアーブラウンを薄く要所に塗り重ねて熱焼け表現を狙いました。この際、元々のシルバーメッキの地の部分もわずかに残すようにムラ気味に塗装することで、より密度感が高まると感じます。


他にはトップブリッジのパーツと一体成型とされる油圧ブレーキ&クラッチのマスターシリンダーリザーバータンクのモールドを切り飛ばし、左3mm/右5mmのクリアーのプラ棒に置き換えて再現。

前回制作したH2RではMFH製の可動式チェーンを使いましたが、今回はキットパーツの断面を四角く彫り込んで実物のチェーンの奥行きをそれっぽく表現しています。


フロントフォークは別売のモンモデル純正ディテールアップパーツセットに置き換えましたが、正直カウルに隠れてしまう部分のため、キットパーツのままでも良かったかなとは思います。


鮮やかなグリーン塗装が目を引くトレリスフレームは、クリアーコートして塗膜の厚みを増やして立体感を強調しました。




AFVの分野では確固たるマーケットを築いていたモンモデルがオートバイ模型のキット化に乗り出したのは2019年。最初に選んだアイテムはクローズドコース専用設計とされ、コンセプトが単純明快に「世界最速」のH2Rでした。そしてその翌年、その市販車バージョンとなるこのH2がリリースされます。


なぜこのアイテムが選ばれたのか、それはその後のラインナップを見るにつけ徐々に明らかになってきたのではないかと思われます。すなわち、1/9というスケール、メッキパーツ、エッチングパーツ、ラバー、メタルインレット、そして塗装済みという選択肢がこの市場に於いてどれだけメリットとニーズが存在するのかを探るためのこれはいわばスモールバッジ商品といったところでしょうか。


モンモデルからはこのあと、不定期ながらおよそ一年に一作程度のペースでBMWのモーターサイクルモデルが4作リリースされており、独自路線を突き進み始めているように思います。



最近プラモデルに対する考え方が顕著に変わってきていて、5000円のキットを丁寧に塗装して仕上げるよりも、20000円支払ってでも基礎設計がある程度しっかりしていてストレート組でも違和感を感じないプリペイントモデルのほうがはるかに完成までの道のりが近いな、と。


モノによっては塗装も手直しするかもしれないし、大ぶりなぶん悪目立ちすると判断すれば要所をディテールアップもするかも知れない。でも、それでもヘタな上級者向けモデルでつまづくよりも、確実に一定レベルの完成度が見込めるキットのほうが嬉しい。


組立工程における精度の高さや完成度でいえば間違いなくタミヤ1/12シリーズに軍配が上がるのですが、このキットはそれとは立ち位置の違うところで勝負しています。


よく見かけるチープな完成品じゃなく、リビングやガレージに飾っていつまでも眺めたくなるようなビッグスケールかつ精巧なディスプレイモデルを欲する、模型以外にも広くいろんな楽しみを持つような趣味人にこそ求められるアイテムではないか。そう思えるものがこのシリーズにはあるような気がします。





ということで、新年1回目の投稿でしたがいかがでしたでしょうか?


同じくらいの熱量で制作を頑張る人へ向けて強くおすすめしたい今回のモンモデルのH2。


H2Rと2台並べて展示するとそれはもうすごい満足感が味わえます。とにかく大きいからね。

ショーケース、狭いな…