リキシさんにお見立て
してもらう。
馴染みのショップに二人訪れて
わたしは試着室にこもり
1着2着と着てはリキシさんの前に立ち
「どう?」とお伺いを立てるのだ。
ねぇこれ、着てみて
あれも着て見せてと
あれこれわたしに
試着させては
似会うね、いいねと言ってみたり
地味だねとか
ピンとこないねとか
物言いをつける。
ファッションについて
はっきりと僕好みを
持っている。
リキシさんは女性に手厳しい。
ある時はわたしを抱きしめながら
背中の脂肪をそっと確認し
指を滑らせながら肌の状態を
確認していたりする。
きっとね。確かに。
横たわるわたしに
「ねぇ、加齢で君の胸が
脇側に流れないように注意して
バストの形は大事だよ」
などと言うのだ。
立ち姿、歩く姿はもちろんのこと。
髪が乱れてるとか
髪が傷んでるとか
白髪のとか
こんな指摘は日々のこと。
食べ物に至っては
“白い物”を取らせまいと努力し、
そうそう歯とか歯間、
口元の指摘もよくあること。
昨日書いたフェイスラインもその一つ。
口角が上がってよし、
ホウレイ線など出ようものなら大変で、
鼻毛のチェックも怠らない。
息苦しくないの?
そう思う方はいるかもしれない。
わたしにはこれが普通
嫌な感じはしない。
億劫でもない。
彼は口を出すが金も出す。
よく考えてみたら我が父は
同じことをわたしに言っていた。
わたしは幼女がするように
父親のようなリキシの指導に
従って自分のからだを
眺めているだけだから。
リキシさんは華やかな女性を好む。
上品なのは前提条件。
肉感的なボディラインに
その思考は柔軟で
打てば響く、軽妙な会話を求め。
そうそう、こだわりが強すぎるとか
尽くす女が好きじゃないらしい。
恐らく外見の好みは
劇中のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。
プライベートの彼女は
垢抜けないけどね
劇中の彼女に見る
出る杭打たれぬ存在感と
上品の中に色っぽいのがあるのが
いいんだそうだ。

以上が簡単に述べる
リキシさんの僕好み。
実際はもっと複雑だと
いうだろうか。
この夏、わたしはリキシさんに
たくさん小さな喧嘩を
たくさん売っていた。
ふたりの関係が
少し、ではなく
うーんと、不安になったのだ。
彼の周辺には
優秀な女性がたくさんいる。
華やかさもある。
彼好みの女性が現れて
その心が奪われてしまったら
どうしようと想像し、
想像は妄想化して
既成事実のように
わたしには思えてくる。
会話をすればその不安
がこぼれ出る。
ばっかじゃない?
どーしてそんな心配するの?
不安が消えそうもない
そんな教科書通りのお返事をして
リキシさんは
わたしを抱きしめてくれるのだ。
あの時、背中のお肉は
つままれていたんだろうか。
痩せすぎても
太り過ぎても
僕好みではない。