3.戦いに生きる | 祈るまえに、恋をして。

祈るまえに、恋をして。

ときどきぽつりと更新。

仮に、ここに

長い長い、
人ひとりが通れるくらいの
道があったとしよう。
人がすれ違うには
少し狭い道。
肩がぶつかってしまう道。

あなたはその道を歩いていく。
ここでいう“あなた”は
私と同じ“女”だとして。

少し歩いていくと
向こうから男性が
一人歩いてくるのが見えてくる。

この狭い道の主導権を
握るのはあなたか?
その男性か?
その道を譲るのは誰だ?

その昔なら、この私
その男性が近づくにつれ、
手に手榴弾なんぞ握り
戦闘態勢に入っていたかもしれない。

この狭い道
絶対わたしが先に、その主導権を握り
立ち止まらず、歩かねばならぬ。

そんな風に思っていたかもしれない。

「道を譲るのはお前だ!」
とばかり前進していたことだろう。
立ち止まらず、肩をぶつけたところで
かまわぬとばかり、強い目をして
ずんずんと進むわたし。

今からしたら、嫌な女だね。

リキシは、付き合いが進むにつれ
まるで、そうだな
七五三の女児に着物を買うかのように
彼は、私の身支度に興じた。
リキシはそれはそれは
とても楽しそうに、少し自慢げに。

私はリキシの目線で選ばれた
洋服やバックが物珍しく
そして似会うよと言われるまま
“素直”に身につけてみた。

今までと違う自分。

「男好みの」と言われてしまえば
それで終わってしまうが
男の目で吟味された色彩や素材、
デザインは私に変化をもたらした。
体のラインに沿うシルク
優しげな色あい
彼の持つ元来の趣味の良さもあったが
私はどんどん、柔らかで、艶やかで
なにやら華やいだ雰囲気を
まとうようになった。

様子の良い女に
リキシは私を仕立てたのだ。

そして、本当に私は
細い細い歩道を歩いた。
工事現場の横に仮設で
用意された歩道。

向こうからサラリーマンの
男性がやってくる。
どんどん近づいてくる。
するとその男性は
柵ぎりぎりに身をよけて
「どうぞ」と手を出し
道を譲ってくださった。

「道をゆずってもらえる女」

そう心で叫んだわたし。

狭い道の主導権を握るため
戦わなくても
なにやら
様子よく歩いていただけで
道はひらけたのだ。
心から
「ありがとうございます」
を言って、その男性と気持ちよく
すれ違うことができた。

その瞬間、私は今までの自分を恥じ
戦い方を変えた。

戦い方が変わる時がくる。
奪い合うようにして
戦い、我を通すのは辛い。
若いから出来ることだ。

戦わずして得るという、
戦わずして勝つということは
女の大切な知恵のようなものだと
私はこの時感じた。