コンサートのお客さん、
“サクラ”のアルバイトをお願いされた。
「客が入ってないんだよ~」という大学生。
面白半分でその会場に友達を連れ立って行ってみた。
「一階でファンと一緒になるのもしんどいね」
と二階席へ。
愕然とした。
埋まっているのは前から2列。
それもまばらに。
数えられるほどの人。
ほどなく、アイドルは現れ、
装飾もバンドも演出もないその舞台で
ピンスポットを浴びながら歌い踊り始めた。
誰もいないコンサートホールで、
みんながよく知っているその歌を
みんなが踊れる振付で。
彼が自殺したのは、
それからどれくらいたってからの事だったか。
高校生の私たちはバイト代を反古にして
会場を後にした。
私たちより年上のそのアイドルを
見続けるのは苦しくなったからだ。
最初は茶化していたものの、
そのうちだれもが黙り始めた。
アイドルの終焉。
この浮き沈みの世界は残酷だった。
高校生の私に、
栄光と挫折、浮き沈み、相反する二つの
要素が、実は背中あわせだと知らしめた出来事でした。
光に照らされた栄光が作る影は、
この上なく暗かったのです。
「失うことを恐れずに」などと
人は簡単に言うけれど
得てしまったものが大きいほど
本当に“失う”ということは
計り知れない苦しみがあるものだと
今も思っています。