大学生だった当時、この会見を見て凄く“違和感”があったのを覚えている。
その違和感の正体を今になってようやく知るのだが、この時のマイケルは酔っ払っていたのだ。
AEG裁判でのランディ・フィリップスの証言によると彼は会見前、精神不安定に陥り、アルコールを摂取し酔っ払っていた。
会見に出ることができたのも奇跡的だったという。
ファンになって以降、たくさんのマイケルの会見やインタビューを見てきたけれど、そのどれもが紳士的で、優しさに溢れていて、頭の回転もとても早い人だと感じた。
でもあの時のマイケルからは、そのどれをも感じ取ることができなかった。
あの異様なハイテンションから、マイケルらしさはひとつも感じなかった。
マイケルを知らない人は、是非BADツアーの時のインタビューを見てほしい。
相手の目を見て、必ず質問が終わってから答える彼の姿を。
どんな質問にも敬意を払い、とても丁寧に答えている。
今になってあの会見を見て思うのは、あのツアーはマイケルの意思ではなく、完全に仕組まれたものであったということ。
マイケルは自分の仕事を完全にコントロールできる状態ではなかったし、50公演ものツアーをできる健康状態でもなかった。
AEG裁判でも明らかになっている。
私はAEGだけに責任があるとは思わない。
マイケルから利益を搾取しようとした人々。
マイケルを社会的に抹消したメディア。
その全てが複合的にマイケルを死に追いやった。
巨万の富は幸せをもたらさない。
スーパースターが望んだのは、ひとりでスーパーへ行くこと、家族や友人と公園や映画館で休日を楽しむこと。
誰にも邪魔されず、日常を過ごすことなのだから。
大多数の人々は、それを当たり前と思うけれど、それは儚いくらい、幸せなことなのだ。