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了くん「ちょっと頼まれてくれないか」
あすか「あれ?どなた?」
了くん「竜巻で家を壊されて、自身も負傷してしかも身寄りがないんだってさ。親戚が来るまでうちで預かる」
あすか「ああ、そうなの。私はあすかっちと呼んで。お名前は?」
すばる「すばる」
あすか「すばるちゃんって呼んでいい?」
すばる「勝手にしろ」
もうひとりは?
すばる「あいつは技能実習生のフォン・ティ・ライだ」
あすか「そうか。そういう名前なら。公用語はフランス語…私は苦手だ、フランス語の出来が悪かった」
あすか「久美子ちゃん、オペラの舞台でフランス語習ったよね」
久美子「とっくに忘れた」
了くん「あっちは日本語分かるってさ」
あすか「どうして日本に来たの?」
フォン・ティ・ライ「弟妹まだ小さいし、お母さん身体弱い。お母さんに不老不死の薬持って帰る、この家そういうりんごがあるって聞いた」
あすか「その噂、出どころどこだ?リンゴだけだと毎日食べなきゃいけないんだぞ」
すばる「分かってる。貰いに来た」
あすか「1個250円なり」
すばる「分かった」
あすか「お家に着く前に腐るからここで食べていってくれ」
フォン・ティ・ライ「一つ言いたい。母さんがあちこちに借金してぼくを日本に送り届けてくれて、ボクは農業を覚えられるのかと思ったら、産業廃棄物の片付けや放射能除去の仕事ばかりさせられて、お金まだ一度ももらったことがない。どういうことだ」
あすか「私に聞くな。闇ブローカーなのは分かった」
久美子「すばるちゃん、この男の彼女?」
すばる「婚約者だ」
了くん「とりえず食事をしてくれ」
すばる「パンが一つしかないじゃないか」
あすか「パンがなきゃそこのお菓子を食べていいよ」
了くん「あすかっち、フランス革命はいつだ」
あすか「火(1)縄(7)わ(8)く(9)すぶるべルサイユで1789年」
了くん「その通り。マリー・アントワネットが言ったんじゃないんだけどな、そういうことになったんだよ」
あすか「今、客用寝室に案内するよ」
了くん「ダブル?ツイン?」
すばる「まだツインで」
了くん「じゃ、そういうことで」
すばる「チ、ホテルだったのか」
あすか「私たちが住むまではね、ホテルだったらしいよ」
すばる「ふーん」
あすか「きみ、ご両親は?」
すばる「根掘り葉掘り訊くな。昔からいない」
あすか「そうか、悪かったな」
あすか「ちょっとの間、ここにいな」
了くん「食べたらすぐあの男とルームへ行ってくれ」
フォン・ティ・ライ「お姉さん、綺麗、金髪、本物?」
久美子「父がアメリカ人よ」
フォン・ティ・ライ「ひょうひょう、きみのような子に会った!初めてだ!きみも実習生?」
久美子「ここの家の人間よ」
フォン・ティ・ライ「きみはアヴァロンのリンゴ食べた?」
久美子「アンタに関係ないでしょ」
あすか「久美子ちゃん、もっと優しく話して」
久美子「充分優しいわよ!」
フォン・ティ・ライ「ごめ…さい」
あすか「いや、いいんだ。だけどリンゴはすぐ傷んじゃうから送れない。アヴァロンのリンゴは日持ちするほうだけど、個人的に植物は海外に持ち出せないんだよ」
フォン・ティ・ライ「なぜ?どうして?」
あすか「私にも分からない」
フォン・ティ・ライ「久美子さん厳しいね。あすかっち教えてくれる優しい」
久美子「入国管理局に連絡してー!」
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ライくんは、了くんの服を借りたまま、ふらふら歩いていました。そしてすばるちゃんも後を追います。
あすかっちたちはこの男は大丈夫だろうかと顔を見合わせていました。
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