毒島「おはよう。ちょっといいかしら」
あすか「毒島さん、おはよう」
毒島「この間はありがとう」
あすか「ううん。戻ってこられてよかったね」
毒島「内心、そう思ってないでしょ」
あすか「少しね」
毒島「二瓶さんをいじめないって約束は出来ないもの」
あすか「真夏ちゃんにひどいことして、毒島さん幸せなの?」
毒島「そうね、幸せを感じるわ。ホンの一瞬だけ全能感を味わえるもの。これって病気かしら」
あすか「そうとも言うね」
毒島「でも、あの人が悪いのよ。その器じゃないのに、学級委員になるから」
あすか「だったら毒島さんが学級委員になればいい」
毒島「なりたくないわね。恨まれる仕事なんてやりたくない」
あすか「充分恨まれてるよ」
毒島「二瓶さんに恨まれたってどうってことないわ。あの人は人望がないからね。ねえ高峰さん、あなたのところはお父さんって優しい?」
あすか「うん。怒ったところは見たことないね。とっても優しくて人がいいんだ。実父のほうは恐かったからね、全然違う」
毒島「……そう」
あすか「だから、ドラマの観すぎで妙なこと考える人いるけど、うちは虐待なんてありえないね。すごく可愛がってくれるから」
毒島「まあ、あなた見てるとそうなんだろうなって思う。神様って不公平よね」
あすか「毒島さんってお父さん嫌いなの」
毒島「嫌いよ。家に帰りたくないほど」
あすか「そうなんだ」
あすか「辛いね」
毒島「努力で何でもなんとかなると思ってる奴だから、合わないわ。そういうところが二瓶さんみたいなのよ、うちのは。……本当は分かってる、二瓶さんいじめてもうちはよくならない。でも、二瓶さんを認めたら、私が潰れてしまうわ」
あすか「誰かを否定しなきゃ保てない自我なんておかしいよ」
毒島「私と二瓶さんとのことは放っておいて」
あすか「真夏ちゃんには迷惑だよ」
毒島「それでも、私には他にしがみつくものがないのよ」
あすか「毒島さんって真夏ちゃんに甘えてるの?」
毒島「そうね。……そうなんだわ」
あすか「真夏ちゃんは毒島さんのお母さんじゃないよ。お母さんいるでしょ」
毒島「いつも酔っ払って帰ってくるから、いないのと同じよ。休日は寝てるし。まあ、そういうことだから」
あすか(左)「いじめっ子がいじめられっ子に救いを求めてるなんて知らなかったよ」
久美子(右)「そんな構造だなんてアタシも思わなかったわ。この問題、根が深そうね。真夏ちゃんが気の毒だわ」
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毒島さんは、実は真夏ちゃんにすがっていたのでした。