あすか(下)「あれ?久美子ちゃん……わー、これ何のプレイ?あちこちイター!」
久美子(上)「あすかっち~!シーッ」
あすか(下)「何で私、こんなことになってんの?事故?地震?」
久美子(上)「2日間昏睡してたのよ。アンタ洗濯物干してて、ベランダの床が抜けて下まで落ちたの。さらにその上から鉄骨が降ってきたのよ」
了くん(左)「ベランダが全体的に傷んで、床とその下の金属が腐食してたんだよ。原因は雨漏りだって」
久美子「ベランダって木で出来てるもんなのね。アタシ知らなかったわ」
あすか「そうなんだ。イタ~イ」
久美子「全身打撲だからね。頭も打ってて、頭皮も切れて9針縫ったのよ」
あすか「学校が……響ちゃんにまだ謝ってない」
久美子「学校のことは今、考えないでよ」
久美子(右)「アタシこの2日間で一生分泣いちゃった~」
了くん(中央)「このまま目が覚めないかもって思った」
ツヨシ(左)「さっきまで面白かったよ。でもね、あすかっち、ダメだよこういうの男子ドン引きだよ。ぼくは同情しないからね。さっさと治ってね」
あすか「いっぱい心配させちゃったね」
久美子(右)「心配だったわよ。叔父様とノンコ叔母さん今朝も神社にお参りに行ってたのよ」
ツヨシ(左)「あすかっちベランダの床が抜けて落ちるって間抜けだよね。ぼくら痛いこと続きだから、お祓いしてもらおうか」
了くん(中央)「まあ、目が覚めてよかったよ」
ツヨシ(左)「あすかっちに救急車来たのって初めてだから、実況配信したんだよ。救急隊員の人に怒られちゃった」
了くん(右)「お前本当にバカだよな」
藤村博士(左)「高峰さん、どうですか、気分悪くないですか?」
あすか「頭のてっぺんからつま先まで、じんじんするぅ」
藤村博士「それはまだよかったです。痛いってことは感覚が生きてるってことです。麻痺していたら痛みはないですからね。身体が痛いのにはボルタレンの座薬を入れておきましょう。幸い骨折やおもだった神経・臓器の損傷はありませんので、心配なのは頭を打ったことだけです。目は見えてますか?物が二重に見えたりしませんか?片方ずつの目でものを見てください」
あすか「……ちゃんと両方普通に見えるよ、大丈夫」
藤村博士「それはよかったです。抜けたベランダの床の大きい破片に乗っかった形で落下したので、ショックが少なかったのでしょうね」
藤村博士「状態がよければ5日後に糸を抜きます。もし脳に傷があれば受傷後3週間後から3ヶ月の間に頭蓋内で出血が起こったり、血腫が出来たりすることがあります。その際、頭痛めまいふらつき・手足に麻痺などが生じることがありますので、変な症状があったらすぐ言ってください。もし血腫と診断されたら、神経症状と画像診断による血腫量との総合判断で、内服による保存加療が可能か、あるいは手術加療を行うべきか決定します。内服で改善しない場合、頭蓋骨に1円玉ぐらいの穴を開けてドレーンを通し、血腫を排出します。通常は60代以上の高齢者に起こることですが、まあ、若い人でもそういうこともあるかもと思ってください。何か質問ありますか?」
あすか「いつお家に帰れるの?」
藤村博士「一週間から十日みてください。それで検査してなんともなかったら、一旦帰宅できますよ」
久美子(右)「……聞きたくなかったわ」
了くん(中央)「『かもしれない』なんだろ。大丈夫だよ」
ツヨシ(左)「面白ーい」
あすか「大丈夫だよ。私達、本来は大きなケガや病気ってないんでしょ。全治1ヶ月のケガしたツヨシくんが一週間で治って、私がそんなに長くかかるわけないもん」
久美子(右)「あ~」
了くん「頭を打ったからだよ。頭の傷はおれたちみたいなのでも時間かかるんだ」
あすか「そうなの?」
久美子(右)「そういうもんらしいわ。あと、病院にはアヴァロンの林檎は持ち込めないから」
あすか「そっかー、一口で痛みが引くのに」
久美子「ゆっくり休んで、元気になったらまたアタシ達に美味しいもの作ってよ。……本音は早くなんだけど……了くんもご飯作れるんだけど、なんだかあすかっちのに比べると大味なのよね」
あすか「そうなんだ……了くんのご飯食べたいな」
ツヨシ(左)「ああそうだ、博士の患者さんでアヴァロンの林檎で不死人になった人いるんだけど、転倒して頭打って、若い姿のまま何十年も眠り続けてるらしいよ」
了くん(右)「お前、怖がらせてどうするんだよ」
あすか「ツヨシくん、退院したら覚えとけ」
久美子「フフッ」
了くん「どうやらいつも通りのあすかっちだな」
久美子(右)「アタシ安心したらお腹すいちゃった。ここで海老みりんせんべい食べていい?」
ツヨシ(中央左)「ここに出前取ろうよ。天ぷらうどん食べたい」
了くん(中央右)「今の気分は挽き割り納豆だな……納豆のおにぎりがいい。コンビニ行こうぜ」
ナイチンゲール(左)「あなたたち、今、夜中ですよ!」
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あすかっちも災難です。昨日のエピソードのバチなのかも。
ツヨシくんには散々間抜けと言われるし、あとが恐いと言われるし。
2日経ってベランダは修理中です。
説明に来た博士は本当は夜中じゃなくて翌日です。
人間は身体が傷つくと同時に心も傷つくもので、彼女もその後しばらくの間、普通に生活していてわけもなく悲しくなったり、高いところに登ると膝が笑うなどありました。