了くん(右)「教室でマスクかけてるのがしんどくて学校休んだって……マスク息苦しい?ずっと我慢してたけどイヤになった?そんなかんじ?」
あすか(左)「それもあるけど、マスクしてると思考力が半分以下になっちゃうんだよ、私の場合。相手に伝えたいことの半分も伝わらないし、人の表情まで読めないから腹の探り合いばかりしてるし……全部嫌になって、校門から引き返してきてテレビ観てた」
あすか「女子クラスはみんな聞き分けが良すぎてマスク着用率100%だから、ひとりだけマスクはずしていれば自然に仲間はずれになっちゃうんだよ。期末テストも終わったからまあ休んじゃえって思って……」
了くん「でも、うちの学校ではマスクするようには指導してないよ。あすかっちが外せばみんなのうちひとりやふたり、外してくるんじゃないか?」
あすか「うちのクラス、うるさい委員長がいるからなァ」
了くん「真夏ちゃんか」
あすか「うん。私のグループにいるんだけど、彼女がボソッと何か言うとみんなそっちに耳を傾けちゃうからね。マスク外したら私の周囲、彼女の態度を観て無言で誰も寄ってこなくなりそう」
了くん「考えすぎだと思う。男子クラスは外してるヤツいっぱいいるぜ。沖縄からまた新しいウィルス来たからまた警戒するだろうけど、以前みたいにマスク強制はもうしないだろ」
了くん(右)「今日のあすかっちのプリント、女子クラスの子から渡されたからあとで持ってくる。明日も学校休むのか?」
あすか(左)「分かんない。戻ってきてからずっとごちゃごちゃいろんなこと考えてたから」
久美子(右)「なーんだ、そんなことで休んじゃったの。あちこちの次元や時空とんで戻ってきた割に、逞しくならなかったわね、ぼっちが恐いなんて。なっちゃえば案外気楽なものよ」
あすか(左)「体験者が言うと重みが違うね。今日たくさん考え事したんだけど、久美子ちゃん高1だよね?なのに私は中2だから変だなって。同い年で、久美子ちゃん早生まれなら久美子ちゃん中3のはずなのに」
久美子「あんた認知症?あたし中3よ。忘れてるなら教えてあげるけど、あたし中1から音楽学校に通ってるわよ。大学まで続いてるから受験の心配はなし。記憶確か?確かじゃないならお風呂に入ってゆっくり頭を整理しておいでよ」
あすか「分かった。その記憶すでに違うよ」
久美子「違うの?」
あすか「百鬼丸、ビーちゃん、おいで」
久美子「あんたまだ犬と一緒にお風呂入ってるの?」
あすか(右)「いいお湯だった。たくさん考えたけど、私の記憶だと久美子ちゃんは聖フルール女子学院中学の内部進学落ちて高校から音楽学校行ってる。それをきっかけにご両親離婚してお父さんはアメリカに帰って、お母さんは会社役員と再婚して、久美子ちゃんはうちへ来た」
久美子(左)「おかしいわね、両親が離婚したのってあたしが小さい頃よ。小5でここに来たときにはあんたのホントのお父さん滅多に帰ってこなかったわ。あたしはお父さんがアメリカから仕送りしてくれて、音楽学校を中学受験したわよ。それでいまにいたるってことで」
久美子(左)「あんたは翌年白百合女子受験しに行く途中、不良グループに待ち伏せされて腕折って、アインシュタイン先生のところでなぜか治してもらっちゃって、でも面接には間に合わなくて落ちて聖フルールに行った。アインシュタイン先生が使った薬は骨折や筋肉断裂を治すけど同時に力持ちになったり不老不死になったりーどう、合ってる?」
あすか(右)「私のだけ合ってる」
久美子「あたしについての情報が違うのね。記憶違いじゃないならパラレルワールドね。でも、今、それで困ってる?」
あすか「困ってない。いつもの久美子ちゃんと変わらないよ」
久美子「じゃあ、もうどこにもいかないで。あんたは別の平行世界から来てるけど、どこからどう見てもあたしのよく知ってるあすかっちだし、次元のひずみは別の人に移ったんでしょ?だったらそれで安定したってコトよ。ふだん考えすぎるからマスクが不便に感じるのよ。マスクの必要ない世界へ飛んでいったりしたらどうしようって思っちゃうわ」
あすか「あー、そうか。でも願ったところで行けるわけじゃないんだよ」
久美子「それならいいわ。とにかくいなくならないで」
アインシュタイン先生「ふーん、そんなことがあったの。マスク一枚でずいぶん頭の中が忙しかったね。それに時系列がおかしくなってるのはよくないけど、それはしょうがないから。もしもあのお受験のことがなければぼくたち親子になってないから、ぼくも孤独な老人になってたかもしれない。ぼくとしてはいま幸せなんだけど。あすかちゃんはこうなった自分を受け入れられる?」
あすか「うん。この辺じゃ無双だからね、今の私。今のままでいいよ」
アインシュタイン先生「それじゃ明日から学校ヘ行こう。マスクに関しては、はずしてみたりつけてみたりでもいいじゃない。何も完全にどっちかにしなきゃならないってことはないんだからさ。大人はそうやってTPO使い分けてるの。いつもマスクしていたらぼくも苦しいよ。世の中は白と黒だけでできてるわけじゃないからもっと楽しく生きようよ」
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謎は解きたいけど、今の幸せを壊したくない。しかしマスク一枚のことでも今、幸せとはいいがたい。あすかっちは学校へ行けるでしょうか?










