どうやら長い片想いはこちらだったらしい | towards

towards

それなりの長文になるため読みにくいかと思いますが、
もしよかったら感想いただけると嬉しいです。


あ、と思った。
この子は今、俺に恋に落ちた。
別に俺がとてもモテるチャラ男というわけではなくて、単純に彼女から伝わってくるそういう雰囲気だ。あるでしょ?あー、この人あたしのこと好きなんだな、ちょっと困ったな、って気づいちゃう瞬間。


俺の場合、ぜんぜん困ることなんかなかったんだけど。この子俺のこと好きなのか、ってとても自然に受け入れた。リンゴは果物です、って言われたときみたいに。

落としたシャーペンを拾ってあげたら、手が触れて、目が合って、彼女は小さく「ありがと」とだけ言うと席に戻った。
どうして俺が彼女に好かれたことを自然に受け入れたのかというと、それは彼女が惚れっぽいということを知っていたからだ。
彼女はどうやら見たところ、月にいっぺんは好きな人が変わる。先月はサッカー部の鈴木だったし、先々月は写真部の山田だったし、さらにその前なんか化学教師の宮部だった。
それを、おおっぴらに友達に言って盛り上がるようなことは彼女はしない。
いつもひっそり好きになって、ひそっと次の恋に移るのだ。だから、彼女の友達も彼女が移り気なのを知らないし、好きになられたほうも彼女が好いているということを知らない。もしかしたら彼女自身も好きになったことに気づいていないのかもしれない。
十分ありえる、その線も。
俺は数式の羅列している黒板を眺めながら一人達観していた。
不意に彼女と目が合って俺は彼女を見ていたことに気づいた。驚いたように小さく開いた唇はきれいな桜色で。


そこで気づいた、なんで俺あの子のことあんな知ってるの?