1960年代半ばに普及し始めたノーズライダーには、それまでサーフボードでは当たり前とされていたハーフムーンの姿は無かった。
サーフボードに安定感を齎す為に採用されたハーフムーンは徐々にその姿を変え、D型形状、そして、斜行して行き、いつしかピポッドフィンにその座を譲る事となる。
ピポッドフィンの性能については折り紙付きである事は云うまでも無いが、この世代交代に逆らう下の様にハーフムーンが藻掻いていた時代があった。
本日紹介するボードは正にその時代を象徴するかの様なPIGで、紹介するのは、勿論、ジェイコブスのヴィンテージPIGである。
このPIGが創られたのは1965年。
1965年と云えば、既にホビーからはノーズライダーがリリースされていて、ビングから名品デビッド・ヌヒワモデルがリリースを控えていた・・・
そんな時代である。
サーフボードは単なる波乗りからパフォーマンスを求められる程の注目を浴びる様になり、これまで海の主役として君臨していたPIGに「機動性を加えるには?」が求められている時代でもあった。
そして、試行錯誤の末に採用されたのがテールよりに薄っすらとあしらわれていたコンケーブらしきチャンネルである。
この手法はフィンの形状を変えずともスムーズなマニューバを描けると考えられ、ジェイコブス以外のメーカーでも積極的に採用されて行った経緯がある。
以前紹介したリックのPIGにも同様の仕様が成されている事からみても、この仕様がPIG末期からノーズライダー時代の幕開けを告げる過渡期の名残でもある。
そんな、時代の過渡期に誕生したのが本日紹介しているジェイコブスのレイトPIGなのだが・・・
このPIG、実に良い味を出してくれている。
ヴィンテージで略当たり前のディティール?である「ツイスト」も、このボードにはしっかりと加味されているのだが、相も変わらず、俺の技量ではこの程度のツイストを感じる事も出来ないでいる。
勿論、時代を創って来た歴戦の勲章もタップリと兼ね備えてあるのも、このボードの魅了であろう。
しかし、しっかりとご覧のディケールは色褪せる事も無く、今も輝き続けているからヴィンテージとは本当に不思議なものだ。
このヴィンテージでフィン周りのチャンネル以外に目を奪われたのが、こちらのテールブロックである。
一般的にベルジーツリーのレーベルはエンドに濃い木材を使う傾向が多いのだが、このボードには白木の木材が採用されている。
これが時代の流れなのか?当時のトレンドだったのか?は知る由も無いが、この手の発見が新たに得られるのもヴィンテージの魅力ではないだろうか?
一見、多大なダメージを負ってそうに見える、このPIGだが・・・
ワックスアップを済ませれば直ぐにでもビーチに持ち込む事が出来る状態である為、平日のアイドルタイムに日本の海においての進水式を敢行してあげたいと思うこの頃である。
Keep Surfing!!!!!!