「ギジェットを観た事があるか?」
「あぁ、勿論、観た事はあるよ」
「あの映画に登場するサーフボードは皆PIGだった」
「俺はあの映画登場する様なPIGが創りたいんだ」
「それを可能にしていくれるのがスティーブなんだ」
マイクはこう告げると一枚のデザイン画を送って来た。
そこには詳細なスペックとディケール位置が描かれていて、ギジェットに登場したハーバーのラージディケールを彷彿さるかの様なディケールデザインだった。
半世紀以上のシェイプ歴を誇るスティーブ・ブロムに会って、どうしても聞きたかった事、それは彼が「どんなPIGを参考にしたのか?」だった。
現在リリースされているモダンPIGの殆どが「○○のボードを参考にして・・・」創れらる傾向がある。
「レプリカは創りたくない!」と、豪語しているシェイパーのボードに至っても、汲まなくチェックしていると要素要素でオリジナルの面影が垣間見えて来るのが実情だ。
そんな状況下でスティーブに「何を参考にしたのか?」と尋ねて所、彼は笑いながら人差し指を自らの頭に指して「ここだよ!」と教えてくれた。
「確か、お前の友人がデーブスウィートのPIGを持っていただろ?」
「俺はあれらのボードがショップでリアルに売られている時からPIGを見て来ているんだ」
「マイクから図案とコンセプトを提示されたが、最終的には俺が見て来たPIGをシャッフルしてテンプレートを起こしたんだ」
と、正に巨匠ならではなの云い回しで応えてくれた。
そして、それらの英知を集約させたPIGがこちらである!

昨今のPIGの解釈として認知されているのが「テール寄りのボリュームとナローノーズ」であるが、かの、デイル・ベルジーがデザインしたPIGは「明らかに豚の様な造形」だった事から命名されている事を考えると、PIGに「微妙にナローノーズ」とか「若干テール寄りにボリューム」とかは当てはまらない気がする。
誰が見ても瞬間に「豚」が連想できるアウトラインを用いたボードこそが、本来「PIG」と呼ばれるべきボードなのではないだろうかと暫し思う事がある。

スティーブが創り出したPIGは、痒い所に手が届きそうで届かなかったマイクの歯がゆさを消し去った様な出来栄えではないだろうか?
そして、このボードの最大の特徴としては、何と云っても、このラージロゴではないだろうか?
画像でも確認出来る様にクロスの貼り合わせを敢えて残しているのは、このボードのコンセプトなのである。

ギジェットに登場するPIGと同じ様にラージロゴを纏った姿は、後に迎えようとしている空前のサーフィンブームの足掛かりを再現させるかの様な存在感がある。
また、昨今のモダンPIGに見受けられる2インチのバルサは、このPIGには採用されていない。

当時の2インチバルサは「スペシャル」の意味合いが強く、スティーブの話しでは、当時のビーチで見掛けるサーフボードに「太いストリンガーは印象無い」との事からご覧のストリンガーが採用されている。
更に、このボードのもう一つの特徴が「ポリッシュ仕上」だ。

実は、このPIGにはポリッシュの工程が大まかに省かれている。
ヴィンテージに触れた事のない人には「雑な仕上がり」と解釈されそうだが、「当時、ポリッシュ仕上げされたボードを買う奴は金持ちだけ」とスティーブが云っていた様に、一般のサーファー達は仕上げされたピカピカのボードは「金持ちの道楽具」として鼻で笑っていたそうだ。

そして、マイクのボードと云ったら、ピーターに代表される様にデッドフラットである。
ノーズ、テール共にゴルフボールが静止する程のフラット感は、ヴィンテージをそのまま掘り起こした様な出で立ちである。

フィンは、これまでマイクが乗って来たD型のハーフムーンではなく、リバース型が採用されている。
このフィンはマイクが設計し、スティーブがハンドクラフトで仕上げているのだが、ボードの表面同様にポリッシュ仕上げは施してない。

リバース型は1963年に登場したフィル・エドワーズモデルにも採用されおり、ヴィンテージPIGの代名詞的なディティールでもある。

また、日本で使う事を考えて、ピーターのバルサ同様にフィンに穴を空けてリーシュループの代わりとしている。

さて、このPIG、一体どんな乗り味名だろうか?
他のモダンPIGと比べてどうなのだろうか?
次回は年内最後の更新と称して、友人達のレビューを含んだ様々なPIGの「味わい」を綴ってみたいと思います。
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