「本当はお前にデザインをして欲しかったけど・・・」と、謙遜しながらマイクは事細かく寸法出しをした画像をメールで送って来た。
「このボード、誰に創らせるんだ?」と俺が尋ねると、マイクは即答で「スティーブ!」と、云い放った。
スティーブとは半世紀以上のシェイプ歴を誇るカリフォリニアを代表するレジェンドで、かのデビット・ヌヒワが1970年代に在籍していたダイノーのヘッドシェイパーでもある。
「アメリカに来たら、ぜひスティーブを尋ねてくれ!」、「お前とスティーブは絶対に相性が良い筈だ」と、付け加え、スティーブを紹介してくれた。
マイクは様々なPIGを乗る内に一つの答えを見出した。
それは、PIGが全盛だったころのボリューム、アウトラインを持ちつつも現代のサーフィンにも対応出来る事だった。
「これまで色々なPIGに乗って来たが、そのどれもが乗り易さ、操作性を追求し過ぎて、本来のPIGとは違う方向に行っている様な気がする」とマイクの熱弁が始まった。
俺は「それならヴィンテージがあるじゃないか?」と投げ掛けると、マイクは「ヴィンテージはヴィンテージだ。誰もが気軽に乗れる訳じゃない」と、自身のPIG論を語り始めた。
そして、それを形成できるシェイパーは「俺が知る限りスティーブしかいない!」と、自身がプロデュースするボードのシェイパーに彼を抜擢した。

彼の事を今更俺が語る必要も無く、多くのレンジェンドがリタイヤした昨今において、彼ほどの経験値を持つシェイパーはカリフォリニアにおいてもかなり少なくなって来てしまった程である。
そんな彼は、現在、ベンチュラの郊外にある友人が営むシェイプルームに籠ってボード創りと向き合っていた。
シェイプを終えたばかりのボードを俺に見せ付け、「どうだ?良い出来栄えだろう?」、「お前はこの手のボードは乗らないか?」と、ジョーク交じりに語り掛ける様はカリフォリニアを代表するレジェンドである事を忘れさせてくれる程気さくな人物であった。

彼が通う工房はラミネート歴45年を誇るレイ・ルーギーがオーナーを務めるグラスショップの一角にある。
ダイノーを始めとするスティーブが創り上げるボードの大半をレイ自身がラミネートしており、二人は絶対的な信頼関係で結ばれていた。
レイの工房には以前紹介したシェイパーの系譜が飾られており、ここを訪れる人達を度々釘付けにしているそうだ。







「あとは仕上げをするだけで完成だ」
「それから、こっちも見てくれ!」
さて、肝心のマイクデザインのPIGだが、ちょっとした事を聞きたくなったので彼に尋ねてみた。

「新しいフィンをデザインしたんだ」、「このボードが第一号だ」と説明してくれた。
そして、サインの入ったボードを抱えながら笑みを浮かべ彼のサーフボード哲学を語ってくれたのだ。

「ねぇ、スティーブ、マイクがデザインしたPIGだけど、最終的には何を参考にしたの?」と少々嫌らしい質問をしてみた。
その続きは・・・少々長くなりましたので次回の更新で綴らせて頂きますので、楽しみにして頂けたら幸いです。
Keep Surfing!!!