オーストラリアのピーターから「シースワローにボードを送って置いたぞ!」、「後はユウイチ(オーナーの毛塚君の事)に任せておけば大丈夫だ」と、連絡が入った。
前回の続きになるが、ピーター・サーフボード初のバルサPIGが日本に届く日を待ち望んでいた俺にとっては、正に吉報の何物でもなかった。

毛塚君から受け取ったバルサを始めて抱えた時に「流石ピーターだな」と感じた・・・
ピーターは単に見様見真似でボード創りをしない男である事はこれまでの付き合いで十分に解っていた。
そんな彼だからこそ、当然と云えば当然なのかも知れないが、レールを握りしめた時に劇的な感動にさらされたのだ。

画像では確認し辛いが、現在、各シェイパーが魂込めて削り上げるバルサの殆どはラミネートのフィニッシュをボトム側に持って来るのが一般である。
これはシェイパーと云うよりはラミネート工場でのスタンダードな仕上げによるもので、よりボードを美しく見せる為の手法の一つであるのだが、実はサーフボードがバルサの時代にはレールの際でラミネートをフィニッシュされるのが一般的であった。
これに限ってはシェイパーが指示していても、それらが中々、ラミネーター達に伝わっていない表れだと思うが、中にはそれすらも意識しない事もある様だ。
ピーターは今回のバルサを単なる「'50sPIG」のバルサバージョンとして創り上げた訳では無い。
だからこそ、当時のバルサの在りき姿を忠実に採り入れているのだと思う。
その証がここにも演出されているのだ。

テールエンドに付けられたディケールは、このバルサの為に作られたアルミプレートである。
かのベルジー&ジェイコブスのバルサもこの様なディケールが付けられていた史実からの採用である訳だが、このピーターの粋な計らいは、これまでの「フォーム用のディケールをバルサにも・・・」的なボードとは一線を画する創り込みとなっている。
今回のバルサでピーターが一番拘ったのは、何と云っても原料となるバルサ材である。
このバルサはマイク・ブラックのスペックとなっている為、長さは10ftあるのだが、10ftともなると大半は継ぎ接ぎだらけのバルサになってしまう事から腕に覚えのあるバルサを削るシェイパー達は長さのあるバルサボードを創らないのが通説である。
しかしながら、ピーターは資源が豊富なオーストラリアの地の利を最大限に活かし、継ぎ接ぎの無い無垢のバルサを僅か4本のみで構成し、フォームの形成に至ったのだ。(因みに、シダーやレッドウッドをストリンガーとして多用したバルサボードは見た目こそ豪華絢爛だが、バルサPig本来の美しさを損なっていると否定的なシェイパーもいる様だ)
そんな、質に拘ったバルサから形成されたバルサフォームによって削り上げられたデッキとボトムはボードからオーラを放っている様にも思えた。



このバルサPIGだが、冒頭にも述べた様に「バルサ'50sPIG」では無い。
これはラインナップとしては全く別口なバルサPIGな訳だが、それらは先のアルミディケールもそうだが、独特の形状をしたハーフムーンもしかりである。

フォームの'50sPIGに対して、こちらのハーフムーンは幾分大きく形成されており、フィンの縦位置も'50sPIGよりは後方に斜行している事が判る。

また、ピーターに我儘を云わせてもらったリーシュループはヴィンテージで見受けられるフィンに穴を空けた仕様にしてもらった。

当然、ループコードやフィンに負荷を掛けない様にホールの内径にも樹脂を汲み入れてくれている。
そして、ピーターのPIGと云えば、やはり、このフラットデッキであろう!

フォームのPIGで見慣れていたものの、流石にバルサだとそのインパクトも多大なものが感じられる。
長々と各ディティールを綴って来た訳だが、この撮影の後に早々にワックスアップをし、早速、海に持ち込み進水式を敢行してみた。
フォームのPIGとの付き合いは僅か半年余りだが、その違いをどの程度感じる事が出来るだろうか?
はたまた、新しい発見はあるのだろうか?
次回は手前の技量ではあるが、レビューを綴ってみたいと思います。
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