デイル・ベルジーとハップ・ジェイコブスが袂を分けてから、それまで彼らの工房で働いていた若きシェイパー達は一斉に己の暖簾を掲げ挙げた。
それは嘗てのパートナーであったジェイコブスも同様であった。
時は1959年、サーフィンが大衆化に向かって夜明けを迎える記念すべき年でもある。
しかし、その一方で数あるベルジーショップの中で完全にクローズしてないショップも存在していた。
その店には後にデューイウェーバー・サーフショップを立ち上げ様としているデューイ・ウェーバーの姿があった。
彼は多くのベルジーの弟子達の中でベルジーと仲違いした稀な人物でもあった。
多くのショップがクローズして行く中で、ウェーバーはショップの家主から「君がオーナーをやったらどうだ?」と持ち掛けられた。
ウェーバーはその言葉通りに、これまでベルジーショップだった店を自らの名を冠したデューイウェーバー・サーフショップを立ち上げる事になる。
しかし、ベルジーにとって、その行為は「店を乗っ取られた」と写り、誤解の解けぬままウェーバーはこの世を去ってしまう。
他の弟子達に後れを取りながらもウェーバーは1960年に自身のレーベルを立ち上げた訳だが、彼はベルジーから授かったPIGを中心に多くのサーファーを魅了して行く・・・
本日紹介するボードは、正にその時代に創られた歴史的なボードである。
それがこちらのデューイ・ウェーバーのヴィンテージPIGである。
時は1963年。
サーフボード業界は他のメーカーとの差別化を図る為にボードに様々なデコレーションを加えて行くのだが、このボードは正にそれらの集大成の様なボードである。
ご覧の様に、カラーはウェーバーのチームカラーを象徴するレッドをメインにデザインされており、メーカーのアイコンであるディケールはストリンガーを挟んで左右に付けられている。
また、ストリンガーはバルサをレッドウッドでTバンドしており、如何にも豪華絢欄が成されたデザインとなっている。
テールブロックはベルジーに習い、エンド部分に濃い木材を用いている所等はウェーバーPIGの真骨頂とも云えるのではないだろうか?
そして、ノーズライダーが浸透するまでのPIGの魅力と云えば、各メーカーが鎬を削ったフィンである。
多彩な組み合わせを試み、サーフボードをより華やかに見せる為の演出がフィンであったと当時のボードを知る誰もが云う程、メーカーの見せ所でもあった。
時代的にマニューバを意識していたのか?フィンがやや前方に付けられている所等も、他社の差別化の一環だったのかも知れない。
しかしながら、レイクが掛かっている為、ご覧の様にテールから食み出す様はお約束と云った所であろうか?
勿論、この時代のPIGはロッカーなどは無用で、デッドフラットである事は云うまでも無い。
デューイ・ウェーバーの傑作と云えば、間違いなく1966年に誕生したパフォーマーである。
その為、ウェーバーの血を受け継ぐ息子のシェーもPIGには特別な思い入れは無く、パフォーマーのみにバリューを感じている事が彼の言動から感じられた。
故に、ウェーバーのPIGは市場で見掛ける事は非常に稀で、俺もシェーから譲ってもらうまでは一度たりとも見た事が無かった。
ベルジーのフォームビンテージ同様に、その数が著しく少ない事もあり、「探して出て来るボードではない」部類に入るウェーバーのPIG・・・
若し、巷で見掛けた時には迷う事無くGETされる事をお勧めします。
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