人工生命と意識(3)培養細胞は自給自足で生きるのか ― 永続と限界 | トウドウ (ヴェーダプラカーシャ)オフィシャル

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ヴェーダセンター主宰、瞑想教師/ヨーガ哲学&アーユルヴェーダ講師、インド政府公認プロフェッショナルヨーガ検定試験官&同プロフェッショナルヨーガ・インストラクター、産業カウンセラー、ヴェーダ詠唱家

🌐 人工生命と意識 ― 培養脳・AI・そして「私」とは誰か

 

第3回 培養細胞は自給自足で生きるのか ― 永続と限界

培養皿の中で生きる細胞は、自らエネルギーを作り出して活動しています。
しかし、培養細胞の生命は、温度や酸素、栄養など――すべてを外から取り入れる必要があります。

では、「細胞はどこまで自力で生きられる」のか。
今回は、ヨーガ哲学における「プラーナ(生命の流れ)」の観点から考えてみます。

 

Q&A ― 自給自足する生命とその限界

 

Q:細胞は自分だけの力で生きられる?

A:
結論から言えば、完全な「自給自足の細胞生命」は存在しないようです。

人間の身体も細胞も、常に外界とエネルギーを交換しています。
酸素を取り入れ、食べ物を摂り、太陽の光を浴びる――。
それらすべてがあってこそ、生命は活動を維持できます。

生きるとは、「閉じた存在」ではなく、
「外界とつながりながら存在する」ことなのです。

 

 

Q:培養細胞はどうやって維持されているの?

 

A:
培養細胞は、培養液――つまり“人工の海”の中で生きています。
その液には、糖、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、酸素などが溶け込んでいます。

 

細胞はこれらを吸収してエネルギー(ATP=アデノシン三リン酸)を作り続けますが、
培養液が古くなると老廃物が溜まり、すぐに環境が悪化してしまいます。

そのため研究者は定期的に「培地交換」を行い、
新しい栄養と酸素を補給して“生かしている”のです。

 

つまり、培養細胞の生命は「完全な自立」ではなく、
常に外から支えられている生命なのです。

 

 

Q:人間も同じように外界に依存している?

 

A:
私たち人間もまた、外界からエネルギーを受け取りながら生きています。

食べ物を摂ることでグルコースを得て、呼吸によって酸素を取り込み、
それを使ってATPを作り出しています。

 

さらに、太陽光による体内リズムの調整や、
他者とのつながりによる心の安定なども含めて、
私たちの生命は「物理的にも心理的にも」外の世界に支えられています。

 

ウパニシャッドの言葉

『プラシナ・ウパニシャッド』には、こう記されています。

「太陽はこの世界とすべての存在の自己であり、
この宇宙に遍在するプラーナは、私たちの中のプラーナと同じである。」
(Praśna Upaniṣad 3.8)

सूर्य आत्मा जगतस्तस्थुषश्च ।
योऽयं प्राणः स एष यः अस्मिन् पुरुषे ।
sūrya ātmā jagatas tasthuṣaś ca, yo’yaṁ prāṇaḥ sa eṣa yaḥ asmin puruṣe.

つまり、私たちの呼吸は宇宙の呼吸とつながっており、
生命の流れ(プラーナ)は宇宙と共にある――
この古代の思想はいまも生き続けています。

 

 

Q:どこまで“自分の力”で生きている?

 

A:
生命の中で起こっていることの多くは、自動的な働きです。
心臓も呼吸も、自分の意志で動かしているわけではありません。

 

しかしヨーガでは、その自動的な働きに意識を向ける練習をします。
呼吸を観察し、微細な生理的変化に気づくことで、


“生かされている”命の働きを体感するのです。

自然に任せながらも、意識を向ける――
そのバランスの中に「自力と他力の調和」があります。

 

 

Q:生命が外からの支えを絶たれたら?

 

A:
外からのエネルギー供給が止まると、生命は活動を維持できません。
呼吸が止まり、酸素がなくなればATPの生成が止まり、


やがて細胞はエネルギーの循環を絶たれて死にます。

培養細胞も同様で、酸素や栄養の補給がなければ、


数時間で代謝が止まってしまいます。

しかし、死は「終わり」ではなく、
物質としてのエネルギーが別の形で循環していく過程でもあります。

エネルギーは形を変えて流れ続ける。
ヨーガは、その循環の中に“永続”を見ています。

 

Q:ヨーガの視点での「永続」とは?

 

A:
ヨーガ哲学では、肉体や思考の変化を超えたところに
「不変の意識(プルシャ)」があると説かれます。

 

身体や細胞は外界に依存し、やがて壊れていきますが、
その奥にある気づき(意識)は、
生死を超えてただ“在る”と考えられています。

 

科学が「代謝」という物質の活動を通して生命を理解しようとするように、
ヨーガは「精神の活動(チッタ・ヴルッティ)」を静めることで、
人間生命の本質を探ろうとしています。

 

 

Q:生命は“生きている”? “生かされている”?

 

A:
どちらも真実です。
生命は、外界から必要な材料を受け取って生かされながら、
自らの中にエネルギーを生み出し、いのちを続けています。

生きるとは、与え、受け取り、循環すること。
その往復の中に、生命の永続が息づいているのです。

 

培養細胞の世界は、生命のあり方を映す小さな鏡です。


細胞が外界から支えられて生きているように、
私たちもまた、宇宙と他者、自然との関係の中で生かされています。

 

「自給自足の生命」は存在しなくても、
“つながりの中で生きる生命”は、ここに息づいています。

 

 

 


🕉️ シリーズ「人工生命と意識」
第4回につづく → 神経細胞とコンピュータをつなぐ ― 情報の橋渡し技術


シリーズ構成

イントロ
第1回 培養脳とは何か ― “生きた”コンピュータの登場
第2回 培養細胞はどうやって生きているのか ― エネルギーと代謝のしくみ
第3回 生命は自給自足できるのか ― 永続と限界
第4回 神経細胞とコンピュータをつなぐ ― 情報の橋渡し技術
第5回 自我とAI ― “考えるふり”と本当の意識の違い

 

 

(トウドウ)

 


 

 

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