トヨタ自動車は4月1日付で入社する約400人の「業務職」(一般職に相当)を同社に勤務する派遣社員から優先的に採用する方針を明らかにした。「雇用の安定」を掲げる民主党政権は労働者派遣の適正化に向けた監督を強化しており、産業界では派遣社員の活用範囲を見直す動きが広がっている。トヨタの判断は他社の人事戦略にも影響を与えそうだ。
トヨタは今回、2年ぶりの業務職採用にあたり、同社に勤務する1700人(2010年9月時点)の事務系派遣社員の中から優先的に希望者を募ることにした。「既に当社で働いている派遣社員であれば働き方や企業理念をよく理解しているため」(同社)で、予定数に満たなかった場合は一般からの募集も検討する。
今回の正社員化の対象はオフィス機器の操作などに従事する「専門26業務」と呼ばれる派遣社員。業務内容が正社員を代替する恐れが少ないため例外的に派遣期間の制限(原則最長3年)を受けないが、専門外の業務に従事させることはできない。
ただし、トヨタの職場では合理化に伴い各社員の業務が複雑化し、これまで派遣社員が担っていた業務についても「専門性にとらわれないケースが増えている」という。従事可能な業務に制限がある派遣社員では、こうした業務内容の変化に対応しにくくなっていた。
連合を最大の支持母体とする民主党政権は、派遣期間の制限を免れるために専門26業務を装う違法派遣が散見されるとして、昨年2月から全国の労働局を通じて企業に対する監督・指導を強化している。こうした当局の姿勢も、産業界で派遣社員を正社員化する流れにつながっているようだ。
自動車業界ではトヨタ以外にも、日産自動車も昨年10月から事務系の派遣社員を順次、契約社員に切り替えている。契約期間は最長2年11カ月。同社は09年に東京労働局から労働者派遣法に違反したとして是正指導を受けており、直接雇用することで従業員の管理を徹底する考えだ。
また、民主党政権は仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」や、「製造業派遣」の原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法改正案の成立を目指している。同法案が成立した場合には、企業は派遣社員の活用についてさらなる見直しを迫られそうだ。(1/5 日本経済新聞)
一つ前とは対照的な記事ですね。
記事にあるとおり既に多くの企業で直接雇用への切替えが進んでいますが、その多くが契約社員を中心とした有期雇用であるのに対して、トヨタは「正社員」雇用です。政府は「適正化プランの徹底が正社員雇用を生み出した事例」として喜ばしく受け取っていることでしょう。
私も派遣ビジネスを経験する中で、「なんでもかんでも派遣で・・・」という企業が年々増えていくことに違和感を感じることが少なからずありました。右肩上がりの状況の中で自浄努力を怠った派遣業界にも責任はあると思います。