伊郷が勝負師として生きる道を選んだ理由を、別でエピソード1「マグマ」(仮名)として書いています。
エピソード1「マグマ」は、8歳から20代までの伊郷を描いています。「マグマ」とは、虐げられた怒りがエネルギーとなって、最後の最後の瀬戸際で勝利を収めていく様を描いています。
なぜ8歳からのスタートかというと、伊郷が「僕のお父さん」という作文が地方紙に載ったことで、伊郷は初めて自分という存在が社会に認められたという喜びを得ました。
そのお父さんは、本業の商売がうまくいかず、深夜にスーパーでレジのバイトをしています。けど、伊郷はそんなお父さんが好きです。しかし、「僕のお父さん」というのは、全くの嘘です。伊郷には父親がいません。
伊郷は酷いいじめを受けていました。靴を隠されて、貧しい伊郷は、靴が買えず、1週間裸足で過ごし、足の裏は血まみれになりました。
また、家では、唯一の親である母親が、出来の悪い伊郷を罵倒し続けました。伊郷の母が、伊郷に厳しく接するのは仕方なかった。母は伊郷にどうにかして生き抜いてほしかった。伊郷は多大なストレスで、12歳まで夜尿症を繰り返しました。
中学に入り、伊郷の賢さと粘り強さを認めてくれた人物が現れました。それは担任の松本先生(仮名)です。伊郷が初めて面と向かって、褒められた瞬間でした。松本の一言のきっかけにして、伊郷は覚醒していったのです。
松本先生の一言は、その後の伊郷を何度も奮い立たせるものでした。松本先生の一言が、後々伊郷の心を支えるものになりました。
伊郷は14歳で自分の生きるスキームを描きました。大学に入るためのお金はどうやって工面するか、いつそれを回収するだけの稼ぎを出すか、それを母親や親戚に納得させせて、伊郷は学区トップの進学校を目指すことにしました。
また、同じ時期に音楽を趣味とする同級生 岡本と出会い、岡本は伊郷を支えました。決意して半年ほどで、彼の成績は上位10位以内になりました。小学校時代馬鹿にしていた同級生も彼に一目置くようになりました。
伊郷は学区トップの進学校に合格できましたが、最初の成績は400人中360位でした。伊郷は、自分がもともと才能に恵まれていないことをわかっていたので、自分なりに納得していました。
しかし、担任の高橋は、中学からの内申書で伊郷がのし上がっていく記録を知って、伊郷に「東大進学」を薦めました。伊郷は担任の高橋先生の期待に応えるように、入学後の半年で上位10位以内に入り、十分に東大・京大を目指せる位置に来ました。
決して順風満帆ではなかったのですが、最後の最後の土壇場で伊郷は勝利をモノにします。伊郷はその後、東大に合格します。伊郷は貧しかったので、最初の1,2年で児童ポルノ作品の転売をして、2年間で400万円近い利益を得ました。。
伊郷が、女優の陽子を知るきっかけは、その時の週刊誌グラビアです。全ての煩悩、欲望を抑えつけていた時に、陽子の存在だけが、伊郷は自分の本能を出せる瞬間だった。
大学時代の後半2年間を暮せる目途を立たせることができました。伊郷が14歳の時に示したスキームの第一段階を、達成させた瞬間です。その時、中学からの友人で同じ高校に進んだ庄司(仮名)から、同級生のさくらの紹介を受けました。さくらは、伊郷にとって高嶺の花の存在でした。同級生といえども、伊郷はさくらと高校時代一度も話をしたことがありません。同様に、さくらにとって、伊郷はどことなく気難しい雰囲気があり近寄り辛い存在でした。
伊郷は自分自身をブランド化させる手段として、さくらを自分の恋人にするために、用意周到な戦略を実行します。さくらと陽子は顔立ち、身体つきが非常に似通っていました。伊郷は、さくらに陽子の面影を求めました。また、伊郷がさくらに興味をもったきっかけは、さくらの外見だけでなく、さくらの父親が国土交通省の高級官僚であったことです。さくらは女姉妹で、伊郷は婿養子になることで、その地位と金を自分のものにするために、さくらを利用します。また、伊郷は自分の不遇な生い立ちを捨てたかった。
伊郷は誰よりも勝ちたかった。羨望を得たかった。だから、さくらを自分の恋人にしたかった。さくらはプライドが高い女だった。だけど、伊郷は社会的な地位を得たかったので、さくらに従うしかなかった。そのなかで、伊郷の虐げられたストレスは溜まっていく。
さくらと付き合うと同じ時期に、陽子は一旦女優業を引退します。
伊郷は大学を卒業し、債券トレーダーとして外資系証券会社に就職します。伊郷は上司に罵倒されながらも、土壇場で勝ち抜けます。14歳の頃に決めたスキームの通りに、伊郷は目標を達成し、目標以上の結果を出していきます。
なぜ伊郷が債券という手段を選んだのかは、8歳の頃に書いた「僕のお父さん」と大きな関係があります。債券には、現実のモノやサービスとしての価値がありません。債券の価値を決めるのは、結局はその債券がいかに魅力的であるかを見せるためのまやかしに過ぎないのです。そのまやかしに市場は一喜一憂しているに過ぎません。伊郷は市場のその心理状態を掻き乱して、利益を生み出していきます。
エピソード1「マグマ」では、感情を押し殺し、結果を得るためには手段を選ばずに、どこまでも冷酷になる伊郷を描いています。
勝負師として覚醒されていく伊郷のテーマソングは、TOTOの"Child's Anthem"です。