近況報告
さて、未だにジョグジャにいるわたくしは一体何なのでございましょう(苦)。
この街はインドネシアで一番物価が安く、それだけ居心地がよろしいのです。何しろ最安値の宿が一泊35000ルピアでございますから。ビザが許せばこのまま沈没しても構わないのですが(をい)、いかんせん明日までに出国しないとオーバーステイになってしまいます。
それはともかく、宗教研究報告を。
昨日はボロブドゥールに行って参りました。やっと念願のボロブドゥール。しかしアウトサイドのみ。インサイド不可。それでもチケットオフィスは通常料金の15USドルを取ろうというのです。何ともふてぇ根性をしております。
そのせいで、何も知らずに通常料金のチケットを買ってしまった白人一行が窓口で怒り狂っておりました。「返金しろ」「いや、できない」の問答でございます。その報復なのか、白人の一人がチケット売り場にやって来る観光客に「ここはチケット代をボッタクッてるぜ!」と声をかけ、営業妨害をしておりました。
たまりかねたスタッフは、やむなく返金に応じます。
そこでわたくしが、
「ヘイ、サージェント!わたしは学生ではないが、今日はスチューデント料金(8ドル)で入れてくれ」
と、値切り交渉。世界遺産の入場料を値切るとは、我ながらなかなかやるものでございます。
8ドルで得た成果でごさいます。これ以上は近づけません。
しかし、8ドルでも少し高い気が…(汗)。せめて5ドルにすれば、まあトントンという所でございましょうが。
近郊にあるムンドゥッ寺院にも行ってきました。
ジャワの仏様は、どうも中肉といった体型でございますな。
例えばわたくしが以前行ったタイ王国・スコータイの仏像は↓のような体型でございます。
かなり痩せております。そのまた一方で中国・洛陽にある竜門石窟の大仏像はとてもふくよかで、どっしりしております。「仏像の体型」というのは地域によって相当な差がございますが、この違いをもたらすものは何でしょうな?仏教には様々な種類の仏が存在するというのもあるのでしょうが、その民族の「仏様」というものに対するイメージないし捉え方が、各地で百花繚乱の偶像を生み出しているのだと思います。
カトリック教会も、様々な顔形肌の色のマリア像を作って掲げているように。
ボロブドゥールは内部の見学が叶わず、わたくしとしてはかなり残念な思いが致します。
ですが、まだボロブドゥール周辺は↓このような状態でございましたから、文句は言えません。
ムラピ山からの火山灰が積もり、辺りは灰色の世界でございます。
そこへ自動車が走ると、
あたかもパリ・ダカールラリーのような光景が繰り広げられます。
おかげでわたくしの身体も灰まみれになり、スポンジで身体を洗ったら濁った水がスポンジに染み出す始末でございました。
火山の麓に住むというのは、大変なことでございます。
フローレス島巡礼記2
クタではいろいろとございましたが、それでも十分な休養を取ることができました。さて、元気が出た所でバリ島宗教研究でございます。
まずはデンパサールのこちらの建物から。
日本の五重塔にも似た、この典型的なバリ様式の建物。一体何でございましょう?
お分かりですね?そう、カトリック教会でございます。
バリ人の感性に合うよう、天使はまるでヒンドゥー教の神々のような造形に仕上がっております。そもそも我々日本人のイメージするステレオタイプの天使は、十六世紀イタリアのルネッサンス絵画に由来する造形でございますから、「天使のデザイン」というのはその民族のアイデンティティーをよく表すものなのかもしれません。
そしてバリ島の宗教といえば、やはり同島の文化の源となっているバリ・ヒンドゥーでございます。その総本山が↓のブサキ寺院でございます。
ここは言わば寺院の集合体でありまして、祭る神様の数だけお寺がございます。
大変美しい建物でございましたが、ここに住まう人間の心は大変に汚いものでした。
参拝客が外国人と見るや、「ここから先はガイドがいないと入れない」と嘘をついてガイド料をせしめようとする連中が「機動戦士ガンダムF91」のデナン・ゾンのように襲いかかってきます。
「ここは異教徒立ち入り禁止だよ」
あまりにしつこくそう言われたので、
「わたしは禅宗の仏教徒だ。ヒンドゥーと仏教は兄弟同士のはずだ。なんか文句あっかコノヤロウ」
と、嘘で対抗しました。向こうはまさか、日本人のカトリック信徒がこの世に存在するとは夢にも思っていません。こういう場合は自分が東洋人であることが有利に働きます。
そして仏教徒と偽ったお陰で、↓こうした参拝にも混ざることができました。
バリ・ヒンドゥーの正装で神々に祈る(ふりをする)わたくし。この写真はタイトル画像に使用しました。そしてこのあと、自称ガイドの男Aが神へのお布施10USドルを要求。わたくしはハートマン軍曹直伝の渇で男Aを沈黙させました。
自称ガイドにカメラを持たせ、写真を取らせました。この直後、自称ガイドの男Bがチップ1000日本円を要求。わたくしはカール・ゴッチ先生直伝の裏技で男Bを沈黙させました。
とにかく、バリではボッタクリの嵐でございます。「ボッタクリならどこでもあるじゃないか」という意見が返ってきそうですが、他の地域では外国人からボッタクるにも必ず打算というものがございます。「正規の値段より確かに高いけれど、日本の物価からすれば問題ない」という感じで。
しかしバリ人はそういう打算をしません。具体的に言えば、あらゆる場で「10ドル、10ドル、10ドル」でございます。
もちろん、いかに日本人と言えどポイント一つ一つで律儀に10ドルを落としていたら破産してしまいます。だからわたくしは流血をも厭わない戦いの道を選んだのですが、さすがにこういう方法は万人にはできません。結論から言えば、わたくしのようにバリの文化や宗教を研究するという目的がない限り外国人のブサキ参拝はお勧めできません。
そもそも、神へのお布施は10ドルだろうと500ルピアだろうと重みは変わらないはずです。自称ガイドは「キモチ、キモチ」と言って高額なお布施を要求してきますが、要するに己の懐に入れているのでしょう。
それがバリ人の印象を悪化させ、自分たちのアイデンティティーの源泉であるはずのヒンドゥー教の土台を揺るがしていることに気がつかないのでしょうか。これではカトリックやイスラムへの改宗者が増えたとしても決して驚きません。
それはともかく、このままバリにいたらわたくしの財布が悲鳴を上げてしまいます。ここでの目的はすでに果たしました。クタでハッパを吸いながら沈没するという選択肢もございますが、もし本当にそうなったらわたくしは生きて日本に戻ることはできません。
一刻も早く、兄弟の所へ。
わたくしの両足は、すでに東へ向いておりました。
フローレス島巡礼記1
11月1日の未明のことでございます。
わたくしはジャワ島からバリ島に向かうフェリーに乗っておりました。
ここからは十六世紀カトリックが目指した東の果て、ヌサ・トゥンガラ諸島を目指す巡礼の旅でございます。わたくしの胸は信仰の炎に燃え、遠くに輝く港の光が煌びやかに映りました。
しかし巡礼の旅は決して楽なものではございません。まずはバリ島を経由し、生物学上のウォーレスラインをまたがなければなりません。ですがただ通過するだけでは非常にもったいない。せっかくバリ島に来たのです。噂に聞いたクタで遊びましょう。
というわけで、わたくしのバリ一日目は「地球の歩き方」にもあるゼット・インという安宿に泊まりました。「歩き方」よりも値上がりしておりましたが、一泊100000ルピアはクタでは相場だという話でございました。
クタ&レギャンはやはり外国人向けの飲食店が多く、どうも情緒に欠ける雰囲気を感じました。そんな中でも一際目立つ所に、このようなモニュメントがございました。
これは2002年の爆弾テロで犠牲になった人たちの名が刻まれた慰霊碑でございます。
一番多いのはオーストラリア人でございます。そして日本人二名の名も…。
痛ましいモニュメントでございます。わたくしは立ち止まり、気がついたら顔の前で十字を切っていました。
そんなわたくしのすぐ脇にオーストラリア人の団体がおりました。慰霊碑に刻まれた同胞の名が、やはり胸に沁みたのでしょう。彼らの悲痛そのものといった表情で俯き、中には泣き出してしまいそうな女性もおりました。
ところがそんな我々をよそに、インドネシア人の女の子がキャアキャアとはしゃぎながら慰霊碑の前で記念撮影をパシャリ。やめろ、小娘。ここは黙祷する場だ。アイスキャンディーなめながら楽しく笑う所じゃない。ピースサインするな!君らの同胞も犠牲になってるだろう!
……はっ!またしても汚い言葉遣いになってしまいました。しかしこういう場では、やはり静かに手を合わせるべきでございます。毎日賑やかなクタ&レギャンではありますが、この場所では人間の死について考えさせられました。
そしてその夜、わたくしはどこかビールを仰げる所がないかと通りをうろついておりました。
すると…やはり何と言いますか、こういう外国人の多い土地には必ずおりますな。
「オニイサン、ハッパあるよハッパ」
「キノコ、キノコ!」
「ねえ、コナやらない?」
そのように声をかけてくる現地人が必ず存在します。しかも一人二人ではございません。わたくしはこの一晩で、十数人の人物からそういう誘いを受けました。
わたくしはカトリックの巡礼者でございますから、こういう誘惑にはもちろん乗りません。皆さんも「ハッパ」「キノコ」の意味はお分かりでございましょう。そもそも、わたくしはハッパのバッドトリップの恐怖をラオスで経験しておりますから、他の日本人旅行者よりもこのような誘いには強い警戒感を抱いているつもりでございます。
それにしても、「コナ」というスラングは初めて聞きます。これは「粉」でございましょうか?だとすると、シャ○…。
危険な○ャブはともかくキノコはハッパと並ぶバックパッカーの象徴でございますから、どのようなものか若干興味があったりなかったり…。
い、いやいやいや!私は巡礼者でございます。このようなものには興味を持ちません!
他のパッカーの皆さんも、「ダメ、ゼッタイ」の標語をいつも心がけるようにしましょう!