毎日同じ時間に起き
髪を縛り
顔を洗い
朝ごはんを作り
子供達の着替えや
宿題が出来ていること
持ち物チェック
子供達を起こし
一緒に朝ごはんを食べて
笑顔で送り出す
わたしの朝の日常
だけど一人でいることが怖くて
家の掃除を済ませてから
実家へ行く
父と母は仕事を引退していたので
ほとんど家に居た。
というより、居てくれたのかもしれないと
今、書きながら思った。
3人で一緒に居ても以前のように
笑いながら談笑する訳でもなく
今後の事
病気のこと
そんな話ばかりだった。
生検(針を刺して中の細胞を採る検査)
は何日か後。
わたしはその頃、色んな本を買いまくっていた
健康にいい本
ガンと戦うために
などの本を買っては食い入るように読んだ
毎日毎日毎日毎日ガンに苛まれる日々
恐怖
孤独
不安
そんなネガティブな毎日
大好きな音楽を聴くのをやめ
食事も味がしない
毎日同じような服を着て
おしゃれなんてしない。
ガンを自分で見つけたのは
夏の夜中の3時半前。
毎日、ビクッとして飛び起きるのが
夜中の3時半前。
時計を見る
あの時に恐怖が蘇る
なんでこんなに体内時計正確なのよ…
不思議なことに毎日同じ時間に
飛び起きる
身体や意識はまだ鮮明にその恐怖を覚えているのかもしれない。
おもむろにキッチンのつくえの中から
タバコを出す。
目の前の窓を開けて
まだ静まった外に向けて
タバコをふかす
何故、わたしはそうゆう行為に走っていたのかわからないけど、わたしのホッとできる
アイテムでした。
「わたしにはいま、これが必要」
いまだから言えるけど…
そんな毎日を送っている間に
生検の日が来た。
着いて行こうか?と母や姉に言われたけど
「大丈夫、一人がいい」
と言って
病院に向かった。
もう、あんな思いはわたしだけで充分
注射も嫌いな母がわたしに立ち会える訳ないじゃん
診察室ではない
検査室みたいな部屋に入り、
目の前にはエコーと
何やら管のついた太ーい針
この針を直接刺すのかと思うと
その針が頭の中の恐怖でいっぱいになった
先生と看護師さんが入るや否や
エコーでガンの場所を確認。
「麻酔するから、大丈夫だよ」と先生
「ありえない太さです」とわたし。
先生も看護師さんも場を和ませるかのように
笑顔。
「じゃあ針刺すねー
ごめんねー」
ブス!!!!
痛みはないものの
胸のしこりからありえないほどの体液
看護師さんが
「先生、止まりません」
「しっかり抑えていて!」
出たがっていたように
吹き出す体液
「このまま全部出ちゃえばいいのに」
とわたしは思った。
処置が終わり、さらしのように胸を巻かれ
診察室に呼ばれた
ビーカーの中には
細長いマヨネーズのような
わたしの一部
「先生!キレイじゃないですか?
これ、もしかして
ガンじゃないかもしれませんね」
「いや、あまり良くない。
結果は数日後です
それで、ガンの性質や異形度がわかります。」
またわたしは落胆して
家路に着く。
「おかえりー!
がんばったね
座って座って!
お茶飲もう」
母のくしゃくしゃの笑顔
だけど
鼻の頭が赤い。
目の周りだけ
化粧が落ちている。
でも当時のわたしは
ごめんなさいとか
ありがとうとか素直に言えなくて
怒ってばかりだった。
庭にいる柴犬のショコラ。
「お散歩行って来てくれる?」と言われ
渋々行った先の小さな公園の素朴な木
まるで吸い寄せられるように
その木に抱きつき
人目をはばからず
木に抱きつき泣いた
ずっと泣くのを我慢していたから
季節は秋なのにその木は
温もりがあった
包まれているような安心感があった
木はただそこに立っているだけなのに
わたしを支えるために根をしっかりと張り
受け止めている気がして。
その時、胸の中のもう一つのがまんのしこりが抜けた気がした。
