機会の音
耳に響く電子音のような
アラームの音
「うーーん・・・」と誰かの唸るような声。
いろんな音が耳に入ってくる
もしかしたら、この音は小さな音かも知れない
だけど私にははっきりと聞こえる。
誰かが私の手をしっかり握っていてくれる
手の感触
私の手と温かさが同じくらい?
大きさも同じくらい?
誰だっけ
私はどこに居て
何をしているんだっけ
でもうまく身体が動かせない
胃のあたりが気持ち悪い・・・
私は、首を振ってみる
「あ、そうだ私は手術したんだ・・・」
急に迫る恐怖
安堵というよりも
心臓が急にドキドキする
それに伴って ポ―ンポーンって電子音がシンクロする。
「近藤さん
頑張ったね
わかりますか?」
私は重い首を縦に振る
おもむろに
右手で左の脇を確認する
「ない
脇に刺さる管(ドレーン)がない・・・」
「転移してなかったんだ」
急にこみあげてくる
いろんな想い・・・
「よかった」
触れると同時に
また耳元で声がする。
「脇の転移はなかったんですよ!
よかった・・・」
うんうん
と頷き
目尻から涙がすうっと流れた。
その涙を拭いてくれる
「杉山さんだ」
私に付きっきりで居てくれたんだ。
「ありがとう
ございます」
「私こそ、この場に居させてくださりありがとうございます
手術も無事終わり
ガンもきれいに摘出できました
あとで先生から説明があると思います。
ここは、麻酔から覚醒するための一時的に入ってるお部屋です。
ご家族の皆さんにも
報告が行ってます」
そこから私の意識はだんだんと覚醒し始めた.
他に手術を受けた患者さんの
麻酔から覚醒したような唸るような声・・・
意識がはっきりする。それとともに
胃からこみあげるものがあり
嘔吐する
暖かい手でゆっくり背中をさすってくれる杉山さんの手。
天使のような手。
それから、他の看護士さんが来て
もうすぐお部屋に戻りますねと言ってくれた
みんなどんな気持ちで待っていてくれたんだろう
どれくらい時間が経ったのかな
子供達は、何をしてるかな
安堵と、達成感で幸せな気持ちになった。
私は何も頑張ってないけど・・・
ほどなくして
ストレッチャーが動き
いろんな声がしてくる
もういろんな物も見える
ボヤっとだけど
「マコ、お帰り
頑張ったね」
お母さんの泣く声
お姉ちゃんの優しい手
お父さんが
「よしよし」
と頭を撫でる
まだ朦朧としてるから
応える事ができない
病室に入ると
ローズウッドの香りがした
いろんな感覚が研ぎ澄ませれてるせいか
鼻に付き
吐きそうになる
「ごめん
この匂い、今はダメみたい」
とわたしは言った
覚醒した人の感覚神経は研ぎ済ませれているんだ
わたしは、朦朧とする中でも
そう感じた
話す声
部屋の香り
繊細な音でもまるで近くに聴こえるように
五感が研ぎすまされている
手術をした傷は今のところ痛くない
とにかく寝たい
まだ寝たい
みんな賑やかに話をしている
だけどみんなが集まって楽しそうに話をしているのは
幸せなことだと思った。
その日は姉が泊まってくれた。
子供たちは前旦那の実家で面倒をみてもらっている
手術の痛みが襲う
傷の痛みよりも
背中が痛んだ
何度も姉に
寝返りを頼んだ。
姉の家の子供(姪)もまだ小学生で
旦那さんが家で娘の面倒を見てくれてるという
みんなの協力あってのことに感謝した。
今日はとにかく甘えよう・・・
でも、怖い夢を何度もみては目を覚まし、
姉はほとんど寝ずに寄り添っててくれた
長い長い夜だった
