2014年頃、吉田苑さんで購入したSACD/CDプレーヤー。

2012年発売、定価は94,000円(税込)でした。

前作のPD-Dシリーズが北欧風のラウンドしたデザインだったのに対し、実にシンプルで実際的なデザイン。そして、肝心の音質の方も実にシンプルです。


PD-70はPD-30/10と共にPioneerが開発/発売した最後のSACD/CDプレーヤーになります。

そのため、心臓部とも言えるSACD/CDドライブユニットには内製品を使用しています。

ドライブユニット近影

PD-70にはPioneerのDVDプレーヤーにも採用されているタイプが使われています。これはPD-Dシリーズと同じもので、見た目はPD-D9とは大違いですが、中身は同じです。(PD-30/10はORION製)


一方、頭脳部とも言えるオーディオ回路はPD-Dシリーズとは似ても似つかぬもので、うしお的にはとても好ましいものです。

実にシンプルな構成。

電源部やドライブが良質なものであれば、ここに巨大なコンデンサーや複雑な回路は不要と言うものです。


電源部近影

アナログ系とデジタル系を完全に分離したツイン電源トランスを採用しており、SACDプレーヤーの電源部としては十分に強力なもの。

さらにはコントロール回路やオーディオ回路とはケーブルで繋がっているのみで、相互干渉を最小限に抑えています。


底面


底面には厚さ約1mmのリジッドアンダーベースが装着されており、剛性を高め、制振性を上げている。実際、PD-30/10に比べ、持つと明らかに剛性が高いと感じられます。


肝心の音質ですが、PD-Dシリーズとはうってかわり、特定の音域での加飾や強調、改変がなく、極めてハイスピードで位相の揃ったサウンドとなっており、高音域から低音域までの再生レンジが広く、解像度が高いものとなっています。音感はクールでありながら適度な湿度感もあり、特筆すべきは微弱な音の再生能力で、大音量の中でもとても繊細な音、響きが混濁することなく独立した音としてしっかりと再現出来ており、また演奏後に音がホールに吸い込まれて消えていく様は見事です。

これまでPioneer機はPD-7030に始まってPD-8070, PD-2000, PD-2000Ltd, PD-5000, PD-T05, PD-T06, PD-UK5, PD-HL5, PD-D9/D9mkⅡ, PD-D6mkⅡなどを聴いて来ましたが、それらとは全く異次元の音質で、面食らった人も多いのではないでしょうか?

なお、本機に備えられているHi-bit32は従来のファンに向けたギフト。その効果はレガート・ リンク・コンバージョンPROに比べれば細やかなものですが、やはり妙な響きが加わってしまい、自分はピュア・オーディオモードもOFFにして素で聴いています。


Pioneer機としては異端児かも知れないが、CDプレーヤーとしては原音再生を極めた正統派。

最後の最期に本機を生み出したPioneerの開発陣に敬意を表します。