1月9日(火) 令和6年(2024年)の最初のスピーチの内容は「世阿弥の言葉から」でした。
「世阿弥(ぜあみ)」は、猿楽(さるがく)を優美な舞台芸術である「能楽」として大成した人物で、多くの書も残しています。
その中に、芸の上達のアドバイスと、興行を成功させるための方法論を、具体的かつ詳細に書き記した「風姿花伝」があります。
この「風姿花伝」は600年以上前に書かれた書ですが、現在では能楽に限らず、演劇や芸術全般、さらには、ビジネス書として多くの人に読み継がれています。
その中から有名な二つの言葉を紹介しました。
まず、「初心忘るべからず」です。
この言葉は、過去のスピーチ、第63回「初心忘るべからず」で紹介していますのでご覧下さい。
次に、「秘すれば花」という言葉です。
「秘すれば花なり秘せずは花なるべからず」
秘めるからこそ花になる、 秘めねば花の価値は失せてしまうという意味になります。
隠しておくべき「花」とは、観客に感動を与える力のことです。最初からその花を観客に教えたり、悟らせたりすることなく、ここぞというときにしか見せないことで、その花の価値を高めることができます。
能楽では、この「秘すれば花」を長きに渡り伝承して、現代ではユネスコの無形文化遺産に記載され、海外からも高い評価を得ています。
同様に、日本には、「門外不出」や「一子相伝」という言葉あるように、昔からごく一部の人たちの間で受け継がれてき来ている伝統工芸や芸能、武道、料理などがあります。社会のグローバル化が進む一方で、密かに伝承されている伝統文化があることを知っていてほしいと思います。
以上、ありがとうございました。