第63回「初心忘れるべからず」 | 社長備忘録

社長備忘録

かくすればかくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂

8月4日(月) 今日のスピーチの内容は、「初心忘れるべからず」でした。


「初心忘れるべからず」、このことわざを聞いたことがない人はほとんどいないでしょう。


「物事に慣れてくると、慢心してしまいがちであるが、はじめたときの新鮮で謙虚な気持ち、志を忘れてはいけない」との解釈が一般的だと思います。


しかしこのことわざ、ルーツをたどるとそんなに生易しい意味ではないようです。


このことわざのルーツは、室町時代に能を大成させた世阿弥(あぜみ)であり、「花鏡」の結びとして、「しかれば当流に万能一徳の一句あり。初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。


「是非とも初心忘るべからず。

時々の初心忘るべからず。

老後の初心忘るべからず。

この三、よくよく口伝すべし」

と書かれています。


「是非とも初心忘るべからず」

世阿弥の言う「初心」とは「始めた頃の気持ちや志」ではなく、「芸の未熟さ」、「初心者の頃のみっともなさ」なのです。初心者の頃のみっともなさ、未熟さを折にふれて思い出すことにより、さらに精進できると言っています。


「時々の初心忘るべからず」

若き日の未熟な状態から抜け出した後、年盛りから老後に至るまでの各段階で年相応の芸を学んだ、初めての境地を覚えておくことにより、幅広い芸が可能になると説いています。その時々の演技をその場限りで忘れてしまっては、次に演ずる時に、身についたものは何も残らないと言っています。


「老後の初心忘るべからず」

老後にさえふさわしい芸を学ぶ初心があり、それを忘れずに限りない芸の向上を目指すべしと説いています。歳をとったからといって、「もういい」ということではなく、其の都度、初めて習うことを乗り越えなければなりません。


みなさんも入社したての時、思うように仕事ができなくて、くやしい思いをしたことがあったでしょう。そんなとき、あんな屈辱は二度と味わいたくないと奮起して頑張れと世阿弥は教えてくれています。


そして初心者を抜け出して、仕事をまかされたとしても慢心せずに屈辱感を時々は思い出し、そして初心者の頃からどれだけ良くなったのかを振り返り、さらに玄人の域に入った後も道に終わりはなく、常に向上心を持ちなさいと我々に語りかけています。


今の社会でも、さまざまな人生のステージで、未体験のことへ踏み込んでいくことが求められます。


私にも、入社時の初心、営業に転属になってからの初心、そして代表になってからの初心があります。当然、人前で恥をかいたかは数知れませんし、これからも未熟さゆえの赤っ恥をかき続けることでしょう。そして、そういう時こそが「初心」に立つ時で、それは、不安と恐れではなく、人生へのチャレンジなのだと思うのです。


最後にみなさんも仕事に行き詰まったり、モチベーションが上がらないというときは、「初心忘れるべからず」と自分を奮い立たせてみるのも良いかもしれません。


以上、ありがとうございました。