リベラルアーツ上級 | JOKER.松永暢史のブログ

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今日は、旧約聖書をあちこち読み返しているが、改めて感心させられることが多いと感じる。これを読み伝えたユダヤ人たちは、あるいはキリスト教徒たちは、過去からの大きな遺産を受け継いだことだろう。そして、これほどまでに強く、唯一と思われる「神」を想定し続けた思想に対して、自然崇拝「日本宗教教徒」としても瞠目せざるを得ない。

受験が近くなって忙しいので、リベラルアーツ上級コースは2月いっぱいまで休会ということにした。現在読んでいるのは、『貞観政要』(ちくま学芸文庫)であるが、その次はギルバート・マレーの名著『ギリシア宗教発展の五段階』(藤田健治訳/岩波文庫=絶版)を読むことにしている。これは広大な範囲の知識を駆使した「難解」な書物であるが(例えば、すでにホメロスを読んだことがなければ太刀打ちできないところがあるが)、そこには経験すべき東大系日本語翻訳レトリックの「華」があると思われる。3月にはこの書で奥多摩で読書会を開こうとも画策している。中高生だけでなく成人の参加も可能である。初級コースは、なんとか後数回で『論語』を読み切り、その次は『旧約聖書』か初期仏典『スッタニパータ』に進もうと思っている。

ところでこのリベラルアーツは、音読指導者養成講座を終了した指導者たちを中心に現在音読道場の主催で新たな展開を見せている。

このブログ読者ご存知の通り、この「リベラルアーツ」は、今のところ、これまで私が着想したメソッドの中で「最高」と自認するものである。学校では決して教わることのない、世界各地の古典的叡智を旧帝大系学者の解説文によって若い人たちに伝えるのは、教育上文化上最も正しき導きの一つであると確信している。また、もしこれがわかれば、「了解」されれば、大学受験も怖くはない。旧制高校出身者同様、多くは自己推薦入試の面接で合格するはずである。

日本語古典音読法を学んだ者の次段階にするべきことは、多くの人に読み継がれた世界の偉大なる古典的書物に触れて本格的な教養を身につけることである。そしてこれを、読書を通じて次世代に伝えることにこそ、教育の「深源」があると思わざるを得ない。

これを、浅学にして誠に恥ずかしい気持ちでいっぱいであるが、現在、音読道場主催者の前田の手によって映像として残す作業が進められている。

幸いにしてこれに関心を持つ人は少なくないが、私自身がこれを導くほど充分に知恵ある存在ではないのが申し訳ないところである。

しかし、私と音読すると、多くの子どもたちはその内容を了解する。そしてその証左に意見を口にする。

現代日本語の究極レトリック。実はそれは、弁護士でも官僚でもなく「作家」でもなく、それらに教えた学者が作るものである。少なくとも大学というところで学ぶ以上、その言語使用法を学んでいなければならない。大学に入ってからでは遅い。そして、逆に言えば、もしもそのレトリックを了解する能力があるのであれば、いかなる大学へ行っても学ぶことができる人材になっていることになる。その者たちは、テキストを自分で読んで自分で了解し、自分の意見を言える者たちである。そしてそのためには、会読をする「朋」が欠かせないということになる。

ギリシア劇訳しまくりのマレーのものすごい原文はともかく、それを日本語訳し切った哲学者藤田健治氏の力量は驚くべきハイレベルであると言える。

これを味わいたい者は、古本に当たってこれを入手し、3月以降の会に参加されたい。