『スマホはどこまで脳を壊すか』 | JOKER.松永暢史のブログ

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朝日選書で『スマホはどこまで脳を壊すか』を読んだ。著者の榊浩平氏は東北大学応用認知神経科学センターの助教の医学博士で、加齢医学研究所教授で脳機能イメージング研究の川島隆太氏の弟子である。ちなみに余計なことだが、「助教」とは「准教授」の下に当たる昔で言うと「助手」のこととのこと。次の本では「准教」になっているかもしれない。

これはゲームはもとより、スマホを長時間使用してオンライン利用を行うと思考の中枢の前頭前野がやられてしまう、特に成長期の子どもにとっては致命的な欠陥を与えるというもので、私がこれまで観察してきた、「ゲームやる子は勉強ができるようにならない」、「スマホばかりやる人は頭の働きが悪い」ということと一致する。

最近自分の感覚的にしてきたことが、結果的に理にかなっていることを知らされて少し驚かされることが多いが、私は、「オンライン」と言うよりも「モニター画面」、特に画像が動くものが危ないと感じてきたが、それはADHDの特性なのか、ある程度の時間、たとえば30分くらいでアタマが「イヤ」になってきてしまうからである。本だと3時間ぐらい行けるが、モニター画面は1時間も見ていられない。

スマホについて言えば、ほとんど電話使用でオンラインは使わない。その大きな理由は画面が小さくて指先が不器用なためと目が疲れるからであるが、I-padなどを勧める人もいる。そもそも電話で長く話すことが苦手で、とかく要件だけになることがほとんどである。デスクPCから離れて外へ出ている時は、メールもラインもしない。

この本には、著者の実体験例に基づく、「脱オンライン習慣」についても書かれている。

私は理屈ではなく感覚でモニター画面を嫌ってしまう体質のようである。これは毎朝入浴後生オレンジを飲む習慣やプールにちょいと行く習慣やガーデニングで植物に接する習慣、あるいは家事といったデスクを離れることを感覚的に選択していることとも一致するかのようである。そもそも生徒たちに教えに出ることが気分転換であることもある。

健康のためであったのは「結果」であり、それを目的にしていたわけではない。あえて言えば単なる「暇つぶし」。そして、それを決定しているのは感覚である。寒いと服を着るのと同じ、暑いと日陰に入るのと同じである。

あえてその目的を言えば、デスクワークの継続のためということになるが、デスクワークには、このブログ同様、「遊びの要素」も多い。それに書くことと読むことと構想することは、私の本線であり、さらにそれを続けるために旅や焚き火が必要になる。

話が逸れた。これでは本の紹介にならない。私はこの本が注意深く「ゲーム使用」という言葉を避けて「オンライン使用」という言葉を用いる背景にあったことを想像すると同時に、この本がより多くの人に読まれるべきものだと確信する。

この本は、数多くの脳活動測定データのための実験結果や、世界中から集めた多種多様なデータを利用した科学的な考察のものであり、現在未来育児中の親たちの必読の書の一つとも言えると思った。しかし、すでにこの本が読めないレベルのオンライン脳になった人たちは、Kindleで読んでも理解することはできない状態なのかもしれない。

考えればわかることを考えずに不必要に繰り返しすぐ答えを得ようとする習慣。思考過程を省略する習慣。これが子どものアタマ(前頭前野)の発達に悪いことは、誰しももしよく考えてみれば明らかなことである。

糖分の過剰摂取を抑えない親がいる。ゲームやオンラインのやり過ぎを制限しない親がいる。

これは単純に「子に甘い」という話ではないと思う。