私の魚遍歴ー7 | JOKER.松永暢史のブログ

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明くる日の月曜日、学校が終わるとすぐマンボウに飛んでいった。ヤマギシも駆けつけた。

熱帯魚屋の店主は言った。

「キミたちが獲ってきたのは452匹。そのうち今朝まで生きていたのが186匹だった。つまり266匹が死んでいた」と言って、発泡スチロールの上の新聞紙に並べたタナゴの死骸を見せた。見ると、だいたい小さい順から大きい順に綺麗に並べられ、まるでミニ魚屋のようだった。

「1匹5円で186匹だから、930円ということになるが、1000円におまけしておこう」

「えっ、死んじゃった分はダメなの?」

「そうだよ、うちは魚屋ではない。生きている魚しか買わないよ」

これにはややがっかりだった。

少なく見積もっても400匹、つまり2000円と踏んでいたのだ。

交通費は親からもらっていた。しかも小学生料金で浮かせた。

それでもヤマギシと私は、500円ずつ山分けして嬉しい気分になった。今なら5000円くらいの値打ちだった。

彼は、これに有り金を足して、大きくなった足用にサッカーシューズを買うという。

私は、これでは水槽資金の4分の1にもならなかった。

さらにこの明くる日、マンボウに行くと、驚いた。

この店は外を歩く人の目に止まるように入り口脇に海水魚用の深くてでかい水槽を置いているのだが、今日そこに入っていたのは、紛れもなく自分がとってきたタナゴの群れだった。大型水槽にたくさんのタナゴ。思わずうっとりしてこれを見た。

しかし、その水槽の左上には、よく熱帯魚屋が使う白いマーカーで、

 

タナゴ(この字はやや大きい)

小 50円

中 70円

大 100円

 

と書いてあり、おまけに右上には、

 

ミヤコタナゴ 1匹 300円

 

と書かれていた。

 

中へ入ると店主がにこやかに応じた。

「タナゴよく売れるね。キミたちのおかげだ」

「でもこれちょっと高すぎない?オレたちから買ったのは5円で、売ってるタナゴは最低でもその10倍、ミヤコタナゴなんて60倍だよ」

「いいんだよ。これでもお客が喜んで買うんだから」

「それでもちょっと高くない?」

「一度買ったものはその人が値をつけて売るのは自由というのは当たり前じゃあないか。それにおじさんは餌代を出している。餌代はバカにならない。キミたちはただ獲ってきただけ。おじさんは餌をやらなければならない。ホレ」と言って、濡れ新聞紙を広げて、そこから大きなイトミミズの塊を取り出すと、それを水槽内にボチャンと落とした。

魚は一斉にその塊を突っつき出した。たちまち塊が飛び散る。それを追い回す魚が激しく動き回る。

もう水槽内は魚の乱舞。目でじっと魚を追うことなんてできない。ガツガツしているところが犬より凄い。まさに生き物そのもの。

思い浮かぶのは、この人が、タナゴの死骸を小さい順に綺麗に並べていたこと。なぜか憎めない気にさせた。この人は嘘はつかない。約束を守った。確かに熱帯魚屋が死んだ魚を買うはずがない。

それゆえ、問題は何か?

それは、魚をできるだけ死なさずに持ち帰ることに尽きる。

450匹持ち帰ることに成功すれば、一人1000円以上になる。

それにはどうするか。手で混ぜるのでは限界がある。

何かよい方法はないか?