夏期講習教師地獄 | JOKER.松永暢史のブログ

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味は良いが感じの悪い飲食店と、味は悪いが感じが良い店のどちらを選ぶか?

また、

性格は悪いが技術力の高い職人と、性格はいいが技術力がイマイチの職人ならどちらを選ぶか?

では、

教える能力は高いが性格の悪い教師と、教える能力は低いが性格の良い教師とではどちらを選ぶか?

ふつう「どちらも選ばない」というのが答えであろうが、視点を変えると話はやや変わってくる。

ストレス解消の対象として、教える能力は高いが性格の悪い教師と、教える能力は低いが性格の良い教師とではどちらを選ぶか?

この答えは「後者」になる可能性が高い。

「いじめ」というのは、弱者を集団で叩くことだと思うが、では「弱者」ではないはずの立場にある者がその対象になる場合、それはどうなるのか?

そもそも、「いじめ」とは、集団を空間に閉じ込めてそれをルールで過剰にコントロールしようとすることによるストレスがその大きな要因である。「不登校」も同じようなところに原因の一つがある。

我慢させること、大人しく言いつけを守らせること、これはできないことはないが、そのことによるストレスを解放する時間がなければ子どもはやっていけない。

塾の夏期講習で、朝8時から夜8時までというのがある。これは親の出勤時間を見越してのサービスであろうが、これに入れられる子どものストレスが少なからぬことは想像に難くないことだろう。

朝からずっと授業を受けるか演習。それも毎日。こんなことに耐えられる子どもはかえって異常に思える。

塾だと駅の近くにあるのが普通だから、体を動かす施設はない。

とはいうものの外は炎天下。家にいてだらんとするよりこうして友達のいるところへ来る方が楽しいか。それに涼しいし。

しかし、授業と課題演習ばかりではストレスは発散されない。すでに男子はパンパンで刺々しい。女子もだんだんイラついてくる。

そこで選ばれるのが教師いじめである。

教師は生徒に対して「強者」の立場にあるのであるから反発攻撃しても「いじめ」ということにはならない。

そこで選ばれるのが、教えるのが上手くない大人しい先生になる。

彼らが教師に直接口にするあだ名は、

「ハゲ」

「ジジイ」

「ボケ」

「ノータリン」

「給料泥棒」。

その哀れな教師は50代の算数担当であるそうだが、その時間は男女で言うことを聞かずワイワイ騒いで教師をいじめて楽しむという。

彼はどうしてそんなに惨めな立場に置かれてしまっているのか?

彼は教員室では大人しい常識的な人と扱われているのではないか。

集団は無理でも、1対1でなら教えられるのではないか?

でも、彼は大手塾教育産業に雇われている一従業員。

上の指示通りの持ち場について仕事をしなければクビになる。

ストレスを溜めた20人以上の生徒に言うことを聞かせなければならない。

学校の教師は自分で辞めるが、塾の教師はクビになる。

そしてその目の前にあるのは、本来プールで大騒ぎしているはずの子どもたちがストレスを溜めて閉じ込められている密室空間。

学校の教師が気がヘンになって辞めるだけではない。進学塾の講師は夏期講習で気がヘンになる。だけどやめられない。なぜかといえば、塾は生徒を集めて授業料を取ることが目的であるから、生徒の方をお断りすることはできないのである。ここでは「不登校」は「退塾」を意味する。そしてそれは最も避けたい事態である。

目の前の少女が、普段使わなかったはずの罵り言葉を慣れた感じの棘のある口調で使うのを知る時、なぜか教育以前の幻滅を感ぜざるを得ない。彼らのアタマには大人の多くはそう映るのである。まあそれは正しいって言っちゃあ正しくないことはないのかもしれないが・・・・。

成績は良いが下品な考え方をする子どもと、成績はそうよくないけれども上品な考え方をする子ども。

私立の学校はどちらを採ろうとするのか。

夏期講習では下品な他者の習慣が憑らないように注意しよう。