「〜しないこと」と「〜しないようにすること」は異なる。
ミスをしないことと、ミスをしないようにすることは異なる。
笑わないことと、笑わないようにすることは異なる。
腹を立てないことと、腹を立てないようにすることは異なる。
もちろん、実はムッときていることを表に出さないこととも異なる。
「しないようにすること」には失敗する可能性があることを自覚するから注意するという意味が潜んでいる。
そこには失敗しないようにする「意識」が働く。
これは「失敗しないこと」と似ているようで同じでない。
失敗しないようにするうちに失敗しなくなる。そしてそこに「意識」があることを忘れる。
それは当たり前だが、ふつうそんなに難しいことでなければ、たとえば歩いたり手を使ったりなどのように、ほぼ無意識的に失敗しないでできるようになる。
腹を立てないようにすることには、本当は怒ってしまうかもしれないからそれを抑える心がけとも言える。
これに対して、「腹を立てない」とは、本当に腹を立てない心境にあることであり、それは相手の状態に反応しないということも意味する。
「反応しない」と「反応しないようにする」は異なる。
「反応しない」は自分の意識がそれに動かされないことを意味し、「動じない」あるいは場合によっては「愚鈍」の状態である。
「反応しないようにする」は、対象が感知された時、意識はやや動きかけるが意志の力でそれを制御することか。
「しないようにする」にはそれが「しそうになる」ことが前提になっているから、「しない」わけではない。
「反応しない」はその対象への無反応であるから、対象に対する関心が全然ない状態とも言える。
しかし、反応せざるを得ない時に、反応しない場合は、危険な状態になりうる。
それは、反応しようとしない状態でも同じである。
就寝中に「火事」が起こった時に眠り続ければ、確実に死に至る。
「反応」には対象と識別がある。
反応する対象とそうでない対象の識別がある。
「反応」には「個人差」もある。
多くの対象の中で、それに対する「反応」が、あらゆる多種多様な「反応」のごく一部であるという認識がある時、「反応」を制御できるのかもしれないが、これは反応しないことなのか。