高大接続システム改革黄信号 | JOKER.松永暢史のブログ

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高大接続システム改革は、どうやら「座礁」する可能性が見えて来た。

国語科で、思考力&記述力を見ることは、通常の高校生全般の日本語能力が低くなっているので、試験にならない。またその採点も人材不足で、採点しやすい誘導問題になりそうだ。

英語科は、ご存知の通り、聞く読む書く話すといった能力を測ると手間がかかるので民間に丸投げしようとしたが、萩生田文科大臣は民間テスト導入の見送りを発表した。この着地点がGTECであることは見え透いたことだが、21年の新体制開始には間に合わせる必要があるだろう。

数学も、試行テスト結果では、記述部分が試験にならないほど解答率が低い。

他の教科について、共通テストは概ねマーク方式になる予定だ。

英数国の採点ができない。だから民間業者に投げる。それは人件費の捻出ができないからだ。そして、業者はそれを受験者から集めて営業する。しかし、IELTSを主宰するケンブリッジ英語検定もブリティッシュ・カウンシルも非営利組織である。ETSも非営利団体。GETCはベネッセ。なんで我が国では、公営乃至は非営利の組織でやれないのか。

それは、最早、他の業界と同様、官界と業界と学界が一体となって営利を追求している姿ではなかろうか。官から業へは「天下り」というのだそうだが、学から業、あるいは官から学は何と呼ぶのであろうか。

一方で、超教育協会などでは、教育のデジタル化、IT化、AI化が進められようとしている。これには元東大総長で現三菱総研理事長の小宮山宏氏や、東京大学大学院公共政策学連携研究部教授兼慶応大学SFC政策メディア研究科兼総合政策学部教授で、高大接続改革を推進した、現文科大臣補佐官鈴木寛氏らが中心におり、あらゆる教育系企業が参加し、多くの東大系学者も参加し、正に官・業・学が一体になった教育経済活動を押し進めようとしている。

結局、教育に国がお金を出さない。それは、「見返り」が小さかったから。そこへ、塾業界代表の下村博文氏が文科大臣になって、教育再生会議を立ち上げる。それは教育の改革のためではなく教育の産業化のためのものだった。

大学教育を再生するには、専門家の話を聴いて理解し、テキストを読んで理解し、そして自分の考えを文章にまとめる能力を持つ学生を育てなければならない。しかし、企業も大学もセンターも、安易にお金を集められるマーク式試験を加速した結果、上位の大学でも文章が書けない者が多く入学するようになった。いや、そもそもそんなことは関係ないのである。受験料と入学金と授業料と寄付金を取るのが大学教育の存在理由。そう考えれば、騙されて日本に留学するベトナム人と同等の目で日本人の子どもも見られていることが浮かび上がってくるはずだ。

高大接続システム改革が進行して、ついて行けなくて混乱状態になっているのは中学校である。公教育システムを変えようとはしないで上だけ改革を打ち出すから当然のことであるが、そのことへの対処はまだ動いているようには見えない。それどころか、「改革」を叫んで30年以上が過ぎても何も変わらないのが我が国の学校教育ではないか。だから、「教育」とは、その場で働いたり利潤を上げたりしている者のためにあるのであり、子どもをしっかりとした世代交代できる大人に育てようとするところではなくなってしまっているのである。だから、子どもたちの声が届かないのではなく、そんなことと関係がないところに教育があるのである。

羊は喰われる宿命にあることを当の羊たちは意識できない。これが経済を支えているとは、何とも不愉快以外の何物でもない。