Carromyーその29 | JOKER.松永暢史のブログ

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カーンの話の後、各ボードについた「インストラクター」によって、ルールや簡単な打ち方が解説され、初心者も含めて対戦ゲームが開始された。

すごい音である。何しろその数20台。コチン!ガシャン!パチン!とストライカーとコインの弾ける音が天井にこだまして、そこに失敗を悔やむ「アアーッ」という声、上手く得点した人のガッツポーズと歓声。

インストラクターは秋代たちが主宰するNPO法人武藏野キャロム教育普及の会の女性たちが中心。もはや他の愛好家も巻き込んで、だいぶ膨らんでその数20名以上。もちろん夫の遠藤やその友達の笹本らもそのメンバー。

6角堂はホールから出て、そこにいた渕上とオオサワと前田に声をかけた。

「お疲れさまです」

「そちらこそお疲れさまです」

「すごく盛況ですね」

「ホント。驚いたねえ。でも何だか嬉しい感じ」

「全く」

オオサワが前田に尋ねる。

「ところで、オカモトさんは?」

「会長は、今朝の便でパキスタンに旅立ちました」

「パキスタン!」

「まさか、キャロムの件で?」

「いいえ、別件です」

「別件!?それ何?」

「詳しいことは分かりませんが、同行するのは、日本水力発電開発機構の人たちで、自分も羽田で紹介されました。経産省の人も来ていました」

「へ〜水力発電。いったい何をしている人なのかね、あの人は。この会にしても、彼が仕組んだことでしょう。その当人が会場にいないし名前も出ない」

「だから言ったでしょ、いろいろって。あの人は自分にしかできない仕事をして、しかも表には出ない人なんですよ」

「じゃあ、フィクサーというわけか」

「いいえ、貴兄が貴兄であるように、あの方はあの方なりにあの方であるということなのです」