リベラルアーツ合宿で奥多摩に来ている。
夜来風雨の声、朝起きると気温は21度。雨後の筍ではないが、雨後のイノシシで周りの畑はひどいことになっている。珊瑚荘の裏山畑のトマトも鹿に皆喰われた。
正午気温25度。あの連日の暑さがウソのようである。
昨日は、まず『ソクラテスの弁明』を読んだ。有名な、「財産や社会的地位の獲得を第一目的にしてはならない。そうではなくて自己の魂の最大限の向上可能性の追求をこそ実践すべきである」の言葉についてと、「ソクラテスは神を信じるのか信じないのか」といったことを元に議論した。前者については全員が合意した。ただそれを口にすればそうすることのできない多くの人をバカにしたことになるのでまずいということになった。後者については、結局神がどのようなものであるかの規定もできないし、神がいるともいないとも言えない。ただ自分が、たとえば瞑想とか祈りの状態にある時には、自分以外のものの総体である環境の背後に何かを想定しないと自分の存在を確認できないことになるといった議論になった。このあとさらに焚火を囲んで個々の生徒と問答し、夜寝る前に瞑想術を教えた。
それにしてもこの自然環境は本当に学習に相応しい。余計な音がほとんど聴こえない。その中を蝉と鳥の声が伝わる。
午前4時半起床。朝食後、般若心経解説音読。瞑想によって空観を得て「智慧の完成」に至るための真言が「往けるものよ、往けるものよ、彼岸に往けるものよ、彼岸に全く往けるものよ、悟りよ幸あれ。」であるのはなぜであるか議論した。
ソクラテスは、生きていく上での自己の魂の最大限の向上を目指すことが正しいことを示した。『般若心経』は、その上でそれを実践するための最大限のアドバイスを示した。
両者の示すところはほぼ同等のことである。
これが分かった瞬間に、生徒たちに感動が起った。
彼らの夏の成長を望みたい。