今回は,前回(2011/05/16(月))に引き続き,ヨーロッパの車社会について考えてみる。タクシーを題材に,車種の選び方について,多角的に分析する。
春先,大学生活最後の卒業旅行中のことである。
ザルツブルクのタクシー乗り場で,私は,多くのメルセデスEクラスのタクシーの中に,ごく少数だが,BMW5のタクシーを見かけた。
BMWのガソリンエンジンの瞬発力を活かせば,安全性にも優れたBMWをタクシーとして使用しても問題ないと思われるのに,数は多くない。
どうしてか?
筆者は,ウィーン滞在時,夕方,ホテルのフロントの30代と思われる若手の男性スタッフさんに,その理由を尋ねたことがある。
彼は,はきはきとした声で,丁寧に答えてくれた。
「そうですね…。市内には,多くのメルセデスタクシーを見かけますね。その理由は,安全性です。BMWはsportive carですから,多くのガソリンを食います。ですから,タクシーに使うとガソリン代がかかり,タクシードライバーは大変です。なので,タクシーに使うのは,メルセデス,ヴェクトラ,VWなのです」
彼の答えが終わるや,その日,市街地へ出向くために呼んだタクシーが到着。
今回は,ディーゼルエンジンの,白のメルセデスEクラスだった。
確かに,日々の営業活動において,燃費の問題は重要である。
彼の返答を聞くまで,この視点に気づかなかった自分の甘さを,現在も痛感している。
ごく基本的なことだが,我々が直面する問題は,常に,長短を基軸として多角的に,徹底的に分析して解決する,という基本を忘れてはなるまい。
さて,自分のアタマで徹底的に分析した後,燃費より加速度(及び運転の楽しさ)を理由にBMWを選ぶのは,個人の趣味であろう。従って,これ以上,私は立ち入らない。無理にメルセデス,ヴェクトラ,VWを選ばせる必要はなかろう。
BMWを選んでいるタクシードライバーに,直接,「どうしてメルセデスでなくBMWをお選びになるのですか?」と尋ねておけばよかったと,つくづく思う。
ところで,筆者が何かを学ぶ際に用いる方法の一つは,これである。
現場の仕事人のナマの声に,じっくりと耳を傾ける。
そこには,ほんの一言味わっただけで,続きが欲しくなる深い味がある。
よく咀嚼すれば,短時間で,非常に効率よく消化・吸収され,自らの血となり,肉となるはずである。
演習1 ホテルのフロントのスタッフさんに,上記のような,こちらが知りたいと思われること以外にも触れた具体的な返答を述べさせるための巧妙な質問方法を,必要な古典を参考にしながら具体的にまとめよ。