放浪理系女史・ミドリカワです。
昨日の続き、いきませう。
明治時代の小学校理科、内容をもう少し。
狙いのなかに身近な物事を通して知識とともに情緒の涵養を図るという側面もあり、歳時記の如く植物や生き物を季節に分けて説明する流れとなっています。
なので、生物の系統などよりも生活にまつわる具体的な応用例などを重視している印象です。
趣味の園芸じゃないよ。
接ぎ木など繁殖方法に応じた植物(作物)の分類をしているのも、今の教科書では見かけません。いや、接ぎ木の方法を全面にそもそも出しません。
それでも、生活をするうえで、これ以上に役立つ表記は無かったのかもしれません。そして、育てていくなかで、その生態や特徴を見ていく眼も養いたかったのかもしれません。
いずれにせよ先述のとおり、50ページ弱ページ数の内容を1年かけて教えていくとなれば、しっかりした授業を通して目的を達成するのであれば教える側の予備知識の蓄えは見た目以上に膨大だったと思われます。
では、もう一つ二つ見てみましょうか。
どういうわけか、猫を可愛い図解で描いてあるものに未だ巡り会えず。なんだか、つよそう。
猫といえばネズミを獲るもの、というのはよくありますが、住人を害するところもあれど山林保護の助となるという視点はなかなか小学生の段階ではここまで明記してくれるものは少ない印象です。
自然保護だ、共生だ!と声高に出さなくとも、ナチュラルに伝えられると緩やかなれども受け取りやすくて浸透力と説得力は上がる気もしないでもないです。
人体を害する虫・第一位は………
同じ見開きの反対側、筆頭はサナダムシ。
かなり前にモデルのナオミ・キャンベルがこれでダイエットしたとかなんとかも聞かれたけれど、さほど遠くない過去までこいつは代表格だった模様。
遥か昔の今昔物語の一節にも登場しています。
サナダムシは人間が最終宿主といわれているけれど、なかにはそうでないものもあるそうで。
そうでないほうの種類のものは消化器官どころか脳に入り込んで死に至らしめたという恐ろしいこともあったらしいです。
いまではそこまで恐怖に至らしめるものなのかという認識になったのも、近年の衛生環境の向上の賜物。
ありがたいことです。
でも、ダイエットのためとはいえ、サナダムシは積極的に取り込みたくはないです。
全般を通して、
・生活を意識することで、当事者意識と共感を持たせるということ。
・そこから精神面も含めて、科学への興味と人間的な成長を期待していること。
これらをいかに子どもたちに向けて伝えるのかという試行錯誤。
これらも感じられます。
時代を経て、認識が変わったものを実感する面白さも、古文書読みにはありますね。変遷と発展を時代背景とともに垣間見られる。
だからこそ楽しいのです。