しかし、9割影のある表情の中に、時たま1割だけ光が差すことがある。
その1割が慈愛に満ち、優しく、なんとも可愛らしい顔だった。
もし彼がそのような幼少期を送らなければ、この1割の光に満ちた顔が大半を占めていたことであろう。
私の所持している画集を、輝く眼で見る様は、純粋な子供の様でもあり、本当に楽しそうな顔をした。
彼が画集を見る顔が大好きで、私はそれから今まで欲しかったけど購入していなかった画集を取り寄せた。
彼はヨーロッパの画家が好きだったが、私は海外の美術館で買ってきた美術館の画集しかなく、個人の画集は日本人のものが多い。
でもいい美術、芸術はお国を超えて時空も超える。 彼は日本画や陶芸でも楽しそうに見た。
嬉々としてページをめくる彼の傍らに座り、彼の膝に顎をのせ、一緒になって画集を見ていた時間が大好きだった。 彼は、何年も私が忘れていた『創作する楽しみ』『表現の喜び』を蘇らせてくれた。
私はその顔が見たくて、その1割の光り輝く顔が大好きで、今まで来たのだと思う。
夢想家の私は、いつかその1割がもっと増えればいいなぁと思っていたのだ。
でも、どうしても・・・立ち上がれなくなることがあった・・・・・
当たり前のことだけど、彼は私に性病があるのではないかと思っていた。
それが最悪のタイミングで出たのである。
いつもsexの時は、ゴムを使う。 私も万が一を考えて、彼に迷惑をかけたくないと思ったし
風俗に遊びに行く彼からよからぬものも貰いたくなかったし、妊娠もしたくなかった。
だからいつも使った。 でも彼だけからは 「ゴムを外したい」 と言われたかった。
ある時、「ねぇ・・・ナマでやっていい?」 と聞いてみた。
・・・娼婦のくせに余計なことなど言わなきゃ良かった・・・・
彼は一呼吸ついてから・・・・・・・「ちゃんと検査行ってるの?」 ・・・・・・・そうだよな・・・・・・・
「うん、検査はマメに行ってる。ゴム装着だし、私、病気に関しては神経質だから、先ずは心配ないと思うけど・・・」 「でも、検査結果が出た後も仕事してるでしょ? とりあえずゴムつけてやってくんない?」
自分で墓穴を掘ったのは解っているが、この返答に地獄を一周してきたような気がした。
もう私は限界です・・・・・
長々読んで下さり有難うございました。やっと次回で終われます。