町田そのこ「星を掬う」
手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ――。
すれ違う母と娘の感動長篇。
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単行本はちょっと高価なので小説はもっぱら文庫で読む派です。
「町田そのこ」は新しく文庫が発売されたら必ず読む大好きな作家の一人です。
「星を掬う」・・・もう圧倒的でした。素晴らしいです。
物語のあちこちで人が息づいています。
どの作品でもそうなのですが感情の描写がとにかく丁寧で細かい。故に思いが伝わってくる。
前作の長編「52ヘルツのクジラたち」で十分には描ききることのできなかった「捨てた母」側の内側を表現していくことで捨てた側の心情、込められた思いなどが語られる。しかしながら当事者は若年性認知症を患っており物事はスムーズには進まない。
「血の繋がり」こそが「家族」なのか?作者の疑問がぶつけられます。家族の形って何なのだろう?「あるべき」形ではなく、、、
簡単に使われがちな「親ガチャ」のような単純なフレーズは遠く霞んで行きます。
「自分の人生を人のせいにするな、誰かに責任をとらせようとするな。」
自分自身の人生に責任を持つ覚悟、主体は結局、自分自身の手にあるということ。
また、物語は多くの人が避けて通ることの出来ない家族の介護問題にも入り込みます。
「自分の手でやることを美徳だと思うな。寄り添いあうのを当然と思うな。」
「あるべき」構図、「あるべき」図式、「普通ならこうする」「こうでなくてはならない」などという先入観・固定観念・世の常識に縛られるが故に、不自由な生き方を選択せざるをえない人は多いのかもしれません。
物語を彩る(笑)凄まじいまでの下衆・クズ男の存在。
この男のリアリティも最高です。
読んでいて気分が悪くなるほどの筆致の冴え、ここに極まれりです。
この本を読むと反発を覚える人もいるのだろうな、と思う。
特に似たような問題の当事者はそうかもしれません。
人間強くなることは難しい。選び取ることだって難しい。後悔なく決断することなんて恐らくは不可能でしょう。それでも選択して行くしかない。
世界の「切り取り方」って本当に難しいと思う。作家とはそういう仕事ですよね。自分で切ってとった世界を見せてくれる。
決してそれは正解の提示ではないしましてや真理という訳ではないところが哲学や宗教の教義とは異なるところだと思いますし、そこにこそ意味があるように思います。
「記憶の海に沈んで行く星々を掬いとる物語」
今のところ女性作家では「町田そのこ」と「凪良ゆう」は読む本読む本が素晴らしいです。
凪良ゆう「滅びの前のシャングリラ」
「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。
なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」。学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして――荒廃していく世界の中で、人生をうまく生きられなかった人びとは、最期の時までをどう過ごすのか。滅びゆく運命の中で、幸せについて問う傑作。
この作品も素晴らしいです。
使われることの多い設定ですが、まずは登場人物の選び方に始まり、物語の構成・展開、伏線、各パートに付けられた副題などなど最高の仕上がりです。
四部構成の物語の繋がりと視点の切り替え方も効果的。
そして何よりも面白いのです。傑作だと思います。
一か月後世界が終わる、、、例えばそれが10年後だったらどうなのだろう?30年後だったら何が変わるのか?
確実に終わる時が分かっていたらその後、人は何に向けてどのように生きていくのだろうか?、、考えさせられます。
結局、明確な時期が分かっていないだけで、人間は終わることだけは決まっている。知っているはずのそれを普段は意識していないだけで。ここを意識すると少し生き方も変わっていくのかもしれない。
世界の終わり、「いまわのきわ」に豪快なロックを演る。
誰に向けて?それに向かってすべてを開け放つ。
形容できない巨大な何かを怯えながらも同時に愛する。
「最後までやるで。それだけ。」
「これを希望と呼ぶのはおかしいだろうか」
ロックが本来持つ衝動すら感じました。何かの象徴になりえる。
書くのに二か月かかったというラスト3ページの凝縮
もっと色々な作家さん読みたいです。
ですが、読書には時間が必要ですねえ、、、読むの早くないし。

