読めない本 | 音楽見聞録

音楽見聞録

単なるリスナーが好きな音楽について勝手きままに書き散らかし。
CDレビュー中心のつもりが、映画や書籍など他の話題も。

手元に一冊の本がある。
いつ頃入手したかわからないが、表紙は結構ボロボロで紙面もほぼまっ茶色になった文庫本

で、読めない

角川文庫 ドルトン・トランボ著作の「ジョニーは戦場へ行った」
 

奥付を見ると昭和58年(1983年)の版だった。
初版は昭和46年(1971年)だが、この本自体は1939年に発行されているのでベトナム戦争に対する直接の批判ではない。
第一次世界大戦を踏まえて書かれ、第二次世界大戦勃発後2日目に発表された。


時代の変遷に囚われない本質を突いているからこそ戦時中になると何度も発禁扱いになるという重さ

文庫出版と同時期、1971年に映画化もされている。

現時点では国内では絶版状態で、古書のみが入手可能な状況のよう。自身が読めていないのに、言うのもおかしいですが、こういう重要な著作が簡単に入手できない状況ってどうなのだろうか。

で、読んでもいないのにあらすじや概要は十分にわかっている、、、、

無為に生きる青年ジョーが突然徴兵され、砲弾を受け、目、鼻、口、耳を失う。
そして壊疽となった両腕、両足は切断される。


見えない、聞こえない、話せない、嗅げない、手も足も失っている。
できるのは頭や体をわずかに動かすことだけ。
精神には全く異常がないままに、意思を伝える術がない。
どれだけ時間が経ったのか、今がいつかなのかもわからない。

ここから脱出したい、ここから出してくれ!
暗黒、荒廃、孤独、沈黙、終わりなき恐怖、ジョーの内部の意識の流れで物語が綴られていく。

結末も十分に承知しているが、読んでない

読めない

この本、いつものごとく感情移入して読んでしまうと自分自身の平静が保てるか自信がない。全くない。

状況を想像するだけでも慄き震え、鳥肌が立つ始末。


晴天の日、ものすごく体調が良いとき、自分自身の意識をなるべく遠ざけて、客観的な立場で一気に読み切ることしかできないだろう本。

どうしても捨てられないのに結局読めない