The Underfall Yard / Big Big Train | 音楽見聞録

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Big Big Train記事が続きました。

せっかくなのでこのタイミングで発売となった新しいマテリアルを紹介します。

とにかく邦盤は発売になったとしても価格が高いので輸入盤しか所持していません。従って、ライナーにある(と思われる)解説等はチェックする事が出来ません。
以下の情報は全て英文の解説や英語のサイトから拾った情報となります。
限りなくゼロに近い英語力で読んでいるため、間違いがあると思います。その際はお許し下さい。

今回、「The Underfall Yard」という2009年12月発表の6枚目のアルバムがリマスター&新録を加えた2枚組として再発となりました。

このアルバムでは、ついに、David Longdon(Vo)とNick D'Virgilio(Dr)という現在の重要メンバーでもある二人が正式にバンド加入となります。

 

また、Dave Gregory(G)もまだゲストながら多くの曲に参加(正式加入は2011年)しているため、屋台骨が現在のバンドとほぼ同じ状況となる記念すべきアルバムとなります。

またアルバムは全曲がGreg Spawton(主にB)の作品のため、サウンド的にも統一感のとれたアルバムと言えるでしょう。

プログレはテーマの取り上げ方も面白いな、と思っているのですが、このアルバムでも歌詞はかなり抽象的な言葉使いでありながら、実は具体的な英国の歴史の出来事に触発されているものが多いです。

例えば、「Winchester Diver」

そもそも基礎が不安定であったウィンチェスター大聖堂(Winchester Cathedral)は基礎の一部が浸水してしまい、倒壊の危機に直面していました。
潜水士であったウィリアム・ウォーカーが召喚され、1906年から1911年にかけて、最深部で20フィート(約6m)となる地下水中で地道な修復作業を続けました。
当時の潜水具と言えばお馴染みのガラス窓のついた真鍮製のヘルメットというクラシカルなもの。そこへ空気を供給して作業を行うという過酷な状況でした。

満ちてくる地下水、真っ暗な視界の中を潜水し、資材を一つずつ手作業で積み上げて行くという気の遠くなるような作業を担ったわけです。
暗闇の中で5年半、ウォーカーが基礎部分に詰めた補強のための資材は、コンクリートバッグ約25,800袋、コンクリートブロック約114,900個、レンガが約900,000個にも上ったそうです。

こうしてウィンチェスター大聖堂を倒壊から救ったウォーカーの胸像は今も同聖堂内に飾られています。
この曲はウォーカーの作業と大聖堂での出来事を読んだ歌となっています。

「Last Train」

この曲、「Last Train」は、1935年に廃線となった英国の地方線のHurnという駅、そこの駅長Mr Deliaが主人公で最終電車の光景を歌った曲です。

切ないですねえ、、、BBTは本当にコーラスが気持ち良いんです、、、

曲の展開も好みです。


メインとなる20分を超す大曲「The Underfall Yard」は、大英帝国が産業革命下において経済発展の最盛期を迎えたとも言える「ヴィクトリア朝時代」(1837年~1901年)のエンジニアの仕事についての歌です。
イザムバード・キングダム・ブルネルはグレート・ウェスタン鉄道の技師で、橋梁、トンネル、駅舎などを設計・施行監督し、この曲名にもなったアンダーフォールヤードにある水門の改良も行っています。

この曲では英国の国家としてのアイデンティティの変遷が語られているのだと思います。
あの時代は過ぎ去ったが、語られなかった多くの物語がある。それらに学ぶべきである。(とは言ってませんが笑)

このようにBig Big Trainは「英国的な何か」をテーマに据えることが多いようですが、とにかく世界史の大事件までは行かないであろう事柄が並べられているので、日本人である私には調べないとほぼ理解不能のものが多いです。(恐らく英国人でも知らないような、、、)

なので、気を取り直して基本的にはサウンドを楽しみましょう!!!(今更かい!!!)

「The Underfall Yard」 ではIT BITESのFrancis Dunnery(G)が長いギターソロを披露しています。

アラン・ホールズワース・リスペクトのダナリーらしく、それっぽいソロを弾いています。
また、FROSTというバンドのキーボード奏者、Jem Godfreyがギターに引き続きウニョウニョした攻撃的なシンセ・ソロを聴かせてくれます。

さて、今回の再発アルバムですが、なかなか面白い内容です。

(購入するなら2枚組がお勧めです。)


The Underfall Yard (2021)
CD 1:
1. Evening Star
2. Master James of St George
3. Victorian Brickwork
4. Last Train
5. Winchester Diver
6. The Underfall Yard

CD 2:
1. Songs From The Shoreline:
(i) Victorian Brickwork (2020 Version)
(ii) Fat Billy Shouts Mine
2. Prelude To The Underfall Yard
3. The Underfall Yard (2020 version)
4. Brew And Burgh

CD 1は基本的には過去アルバムのリマスターですが、「6. The Underfall Yard」のフランシス・ダナリーのギターはこのアルバムのために新たに演奏されたものに差し替えられているようです。

CD 2のうち、1(i)は現在のメンバーでCD 1の「3」を新録したもので、これにCDシングルで既出だった1(ii)を繋げて、アルバム当初の構想にあったらしい組曲風に仕立て上げた曲となります。

2.は新たに作曲・録音されたお馴染みのホーン・セクションのみによる3.のための前奏曲です。
そして「3. The Underfall Yard」は、なんとこの時点での最新メンバーで新たに全編を演奏し直したVersionとなります。

つまり 現時点では惜しくも脱退してしまったRachel Hall のヴァイオリンや Danny Manners の鍵盤が聴ける。

やりますねえ、、、このメンツでの録音はこれが最後になると思います。
また、4.も新曲となります。

新録のLongdonの歌声は当初のアルバム時よりも深みを増しているような印象があります。
また、演奏は全体的に悠揚迫らざる、という感じで、最初の盤にあった緊迫感や切迫感はやや薄れているかもしれませんが、見事な演奏となっています。

 

こういった新録の仕方も面白いですね。