White Horse Sessions / Njghtnoise | 音楽見聞録

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 以前、記事に書いたモダン・ケルティック・バンドの「レラティヴィティ」彼らはその後どうなった?
答えは今回紹介するウィンダム・ヒル・レーベルに席を置いた「Nightnoise」というバンドへの深化。

 最初はミホール一人とビリー・オスケイのユニットでした。続いてトリーナが加わり、1993年の5作目アルバム「Shadow of time」からはジョンもメンバーとなり、結局ここにレラティヴィティの4人のうち3人が再会することになります。
 「ウィンダム・ヒル」という事で当初はややアイリッシュ色が稀釈されていたイメージのあるサウンドですが、ビリー・オスケイからジョン・カニンハムに変わったところでアイリッシュ色がより強く出はじめたようです。楽器のクレジットも「ヴァイオリン」から「フィドル」へ。う~ん。ここらが拘りですよねえ。この時点でそれぞれのルーツをより色濃く踏まえたアイリッシュを意識したgood musicを作ろうと言うことで本人たちの意識も変革したのだと思います。

 彼らはあくまでもトラディショナルではなく、アイリッシュの現在を伝えようとしていました。従ってとりあげるナンバーもメンバーの手になるオリジナルの作品です。トラディショナルなアイリッシュミュージックを演奏しようとすると必ず出てくるのが、それが伝統的に伝わっている演奏法とは異なるのではないか、という問題点。どう演奏しても自由な気もしますが「トラディショナル」であることを標榜する以上、そこには制約が生まれます。これはある意味不自由な環境です。

 彼らのオリジナルへの拘りはそう言った制約から逃れ、なおかつそれでもアイリッシュ色を感じさせる方法としてはベストなのではないかと思えます。レラティヴィティ後期の頃よりも楽器のエレクトリック度もぐんと下がり、聴き方によってはこちらのバンドの方により生のアイリッシュを感じます。長いキャリアに培われた曲の完成度もひたすら高いです。ここに至りもはや「ウィンダム・ヒル」という色眼鏡ははずすべきかもしれません。アイリッシュ・ミュージックは決してヒーリング・ミュージックではありません。

 4人のメンバーをあらためて紹介すると・・・
ミホール・オ・ドーナル(Micheal O Domhnaill) - vocals, guitar, whistles,synthesizer
ブライアン・ダニング(Brian Dunning) - flute, alto flute, bass flute,whistles, vocals, accordion
トリーナ・ニ・ゴーナル(Triona Ni Dhomhnaill) - piano, lead vocals,accordion, whistle, synthesizer
ジョン・カニンハム(Johnny Cunningham) - fiddle, vocals

 さて、今回紹介する彼らのアルバムは1996年の7作目「White Horse Sessions」。ライブ・アルバム(いつも録音に使っているホーム・スタジオを開放しての録音と思われる。)でありかつこれが彼らの最後のアルバムでもあります。

1. Silky Flanks
2. Shadow Of Time
3. Jig Of Sorts
4. Shuan
5. Do We
6. Murdo Of The Moon
7. Hugh
8. Moondance
9. Heartwood
10. The Cricket's Wicket
11. Night In That Land
12. At The Races

 とにかく4人の楽器テクニックが凄まじいです。リズム楽器がいないのに感じられるこの確固たるリズム感はやはり4人の楽器テクニックによるところが大きいでしょう。

 ミホールの正確無比なギターカッティング、ブライアンの素晴らしいフルート。(特にバスフルートは最高!)ジョンのアイリッシュなフィドル。そして中でもひときわ強烈に輝くのがトリーナの鍵盤とヴォーカル。
 私的にはトリーナの鍵盤の特筆すべきところは、とにかく3連系のトリルの力強さにあると思う。鍵盤でここまでトリルを強調して弾くと一般的にはカッコ悪い、品がない、とか言われそうですが、彼女のプレイはそれが得難い個性にまで昇華しています。前面に押し出たトリルの音色は熱くアイリッシュネスを伝えてくる。ギターで言えばロリー・ギャラガーにも散見されるプレイ。

 録音も素晴らしくクリアで、各楽器の分離も素晴らしくライブプレイを堪能できます。深くかかったエコーも効果を出しています。珍しくジャンルを超えた屈指の名ライブ・アルバムと言えるでしょう。

White Horse Sessions/Nightnoise

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ライブ映像はこのアルバムより以前の彼ら。曲は初期の名曲の1つ、Hughです。