ARIES / Aries | 音楽見聞録

音楽見聞録

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ARIES / Aries (Mellow MMP 479)

01 morning song 07:07
02 coming back to life 04:41
03 the eye of the storm 12:53
04 it struck me every day 03:59
05 crossing the bar 05:42
06 when night is almost done 16:53

 プログレッシヴ・ロックというジャンル自体だんだんと境界が曖昧になっていく中、更に「シンフォニック・プログレ」なるものが果たして一つのジャンルとして確立しているのかどうか私にはわかりません。
ただ、自分の中にあるプログレッシヴ系で、かつシンフォニックな要素が突出しているものこそが「シンフォニック・プログレ」である、とにかく美しくなくてはいかん!というイメージをかなり近い印象で満たしてくれたアルバムを紹介します。

 私の中での「シンフォニック」という括りは主としてストリングス系のバッキングに代表される叙情性が多分にあるものを指し示します。激しいサウンドのものやビートのききすぎたもの、メタル等はとりあえず除外しています。上にも書いたとおりひたすら美しく響くもの。

 Ariesはイタリアのバンド。2004年活動開始で、中心人物はFabio Zuffantiと女性ヴォーカルSimona Angioloniの2名。この二人にゲスト・プレイヤーを加えて作られた作品です。アルバム「Aries」は2005年に発売された(正確には2004年録音、2005年発売?)彼らの1stアルバム。本日現在、検索したところでは残念ながらAmazonやHMVでは入手できないようです。(興味のある方はプログレ専門店を探してみて下さい)

 Fabio Zuffantiはイタリア生まれのミュージシャンで主として担当する楽器はベースですが、ギターやキーボードでも活躍、何よりも作曲家として優れた存在です。このバンド・プロジェクト以外にもFISTERREを始め、HOSTSONATEN(これも是非とも聴きたい!)、TOMMASO LABRANCA & FABIO ZUFFANTI、LAZONA、MASCHERA DI CERA、MERLIN - THE ROCK OPERA、QUADRAPHONIC、ROHMER、R.U.G.H.E.、BORIS VALLE & FABIO ZUFFANTIなど多数のバンドやプロジェクトで活動している現代のイタリアシンフォニックロックシーンの中心人物的存在のようです。(すみません最初のいくつか以外はほとんど知りません。)

 サウンドを言葉で表すのはなかなか難しいのですが・・・

 癖の無い美声の女性ヴォーカル。力を抜いた歌い方からかなりな迫力を持つハイトーン・スキャットまで自由に使いこなせるうまさと余裕があると思います。04での迫力ある歌唱、06での素晴らしいスキャットなど特筆ものです。
 ギターはバッキングに回った時はアルペジオ中心、ソロの時はサスティーンを効かせたロングトーンの叙情味あふれるフレーズ。スティーヴ・ハケット(ジェネシス)~スティーヴ・ロザリー(マリリオン)の系譜と言ったところでしょうか。

 ピアノもしくはストリングス中心のキーボード。ソロをとる時のシンセ音はチープで前時代的だがまあ嫌みはない。そこにたまにフルートが混じる。稀に聞こえるダルシマー。

 曲はほぼ全曲が安心のミドルテンポ(笑)。4小節刻みの循環コードでのソロ回しなど見事にカラーが統一されている。ヴァリエーションが少ないと言われればそれまでですが自分にとってはそこが却って魅力的です。

 たまにありませんか?アルバムの中の1曲で非常に気に入った曲があり、「あ~アルバム全体がこの雰囲気で演奏されていたら良いのになあ~」となることが。このバンドはその期待は裏切りません。初めから終わりまで一緒に濃密な時間を過ごすことができます。(1曲のみ多少アップテンポでやややかまし目の曲がありますが(03)タイトルに「嵐」が入っているので多めに見ましょう)

良く見れば「朝」から始まり「夜」で終わる構造を持つアルバムですが、さすがに夜になるのが早い!この手のサウンドは強烈な日の光には弱いのかもしれません。

 全曲がイタリア語でなく英語で歌われていることもあり、またサウンド自体も特にイタリアの匂いはしません。「イタリアン・シンフォ」という括りでなくシンフォニック・プログレとして深みのある名作ではないかと思います。

 ヴォーカルとギター以外はサウンドの中で突出してこない。自己主張しない。自己主張しないからぶつかり合う部分が少なく、その分サウンドの手触りがより均一なものになる。様々な楽器がインタープレイを展開するバンドも間違いなく素晴らしいのですが、このバンドはそれを望んでいないし、聞き手の私も求めていません。
 楽器もテクニック的に言うならそれほど高度な事はやっていませんし、却って辿々しい部分もあるくらいです。

 個人的には王道の01,歌唱の04,印象に残るリズムの05,全てがてんこ盛りの傑作06あたりが好みです。好きな人には手の多く出るアルバムになるであろうことは間違いない。私もその中の一人です。

 2010年9月にはニュー・アルバムが発売されるとの情報があります。とりあえず同時代にこう言ったサウンドが存在していることをうれしく感じます。

http://www.myspace.com/spacearies
こちらで1曲目「Morning song」を視聴できます。

 (今回は私が憧憬する人物の一人である「サルマシスの泉」女史にご紹介いただいたアルバムです。)