- Op.(オペレーション)ローズダスト〈上〉 (文春文庫)/福井 晴敏
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- Op.(オペレーション)ローズダスト〈中〉 (文春文庫)/福井 晴敏
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- Op.(オペレーション)ローズダスト〈下〉 (文春文庫)/福井 晴敏
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初出は週刊文春誌上で2003年5月から2004年12月にかけて連載されたものです。2006年の単行本刊行時に大幅改稿し、さらに文庫化にあたって加筆されたという作者にとっても力の入ったこだわりの作品と言えるでしょう。
福井晴敏の作品はいつも熱い展開を見せるのですが、これは格別ですね。都心で引き起こされる圧倒的なテロの裏側に隠されている雑多な人間模様が時間を行きつ戻りつし次第に明らかになっていく様はストーリーテリングの妙です。私は単純なので正直、あちこちで涙してしまいました。
・・・使いふるされた言葉や、他人から押しつけられた言葉しか思いつけないで、いまの自分を語る、自分自身の言葉が持てずにいる・・・だけどそんな状態は永遠には続かない。・・・今にきっと自分の言葉を取り戻す。いま現在の自分を語る新しい言葉を手に入れる・・・
一人の少女が口にしたこの言葉をコアに、それに命を託したいくつもの人生や運命が交錯して描かれていきます。
・・・自分がそうだと決めている世界なんて、ちょっとしたきっかけで変わってしまう。よくも、悪くも・・・・おれは、あいつにそれを伝えに行くだけです・・・
これほどまでに気持ちが通じ合う仲間がなぜ敵味方に分かれ争わなければならないのか。伝えたいものは同じなのに。いや~このあたりの設定はさすがとしか言いようがありません。
原本は知らないのですが恐らく下巻の「FINAL Phase」のお台場テロ描写の部分に大幅な加筆があったのだろうと思います。この部分はいわゆる主人公たちが消え、割と客観的な描写が続く部分です。読んでいるときは少々細部を語りすぎかなとも思ったのですがやはり物語により広い視点を与えるためには必要なのでしょう。
方向性や主義・主張がどれだけ曖昧なままであろうとも、ほんのちっぽけな人の心の重なり合いこそがすべてを変えうる力を持つんだ、という一瞬ではかなげではあるが恐らくは真実である「希望」をフラッシュのごとく垣間見せ続けてくれる熱い物語です。
これを共同幻想だと笑うならどうぞ笑ってください、という肯定的な力強さがあります。
この物語、実に多くの登場人物が命を落として行くのですが、象徴的な事は、みな誰かに何かに、次のものに希望を託しながら去っていく、という点です。そこには自暴自棄な存在はひとつもありません。そこには決して美化された死などではなく、のたうち回り苦しみながらそれでも一抹の希望を捨て去ることのできない人間という生き物の本質的な姿があるように思います。
ん~とにかく映像化されてしまうといつもなんだか別物になってしまう福井作品の数々。「亡国のイージス」もあまりにコンパクトだったし、「終戦のローレライ」は陳腐だったし。この小説だけは中途半端な映像化は勘弁してほしいな~。映画にするなら3部作程度のヴォリューム覚悟でやってもらわないと。
また、登場する最新兵器の数々はこの手のものが好きな人も満足すること間違いなしでしょう。素晴らしい取材力だと思います。軍事ホラーものとしてもその規模は一級品だと思います。
”走って縮まらない距離はこの世にはない” ・・・こう力強く言えるおぢさんでありたいものです・・・